世界をコラージュる

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 ユミカと私は幼馴染だ。小学校中学校は同じ学校へ一緒に通ったけれど、高校進学では別れてしまった。ユミカは総合学科の高校へ、私は普通科の高校へ。  ユミカの夢はイラストレーターだった。それで絵に強い美術部がある高校を選んだ。でも私は小説家になりたいから、志望の大学に強い普通科高校へ進んだ。  ユミカの絵は、素人の私が見ても素敵だった。模写も上手だし、きっと彼女なら夢が叶えられると思っていた。けれど今年に入ってから「普通科の大学も視野に入れて塾に通うことにした」と言い出した。聞けば絵を描くことができなくなったそうなのだ。俗に言うスランプだから、と。  私はユミカの気持ちを尊重して応援しようと決めた。たとえ「絵を描き続けて欲しい」という本心があったとしても、それを突きつけたところでユミカは救われないと思った。 「大学、一緒だと楽しそうだよね」  なんて言って、私は笑ってごまかした。ユミカも笑っていた。それから今日まで、私は彼女の描いた絵を一枚も見ていない。
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