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「私にもできるかな?」
「できるよ。好きなシールやマステを思うように貼っていけば良いんだよ」
ユミカがテーブルに広げたシールやマステを眺めながら、私はまっ白なノートと向き合った。
「何枚使っても良いよ! ほとんど百均でそろえた素材だから」
「ありがとう。でも、どう作ればいいか……」
私の困惑した表情を見て、ユミカも「そうだね」と神妙にうなずくと、自分のノートを広げて素材を並べはじめた。
「フレークシールは剥がさないとこうやって並べられるから、良いよ。背景にマステや大きめのシール、あとデザインペーパーを使ってみると良いかもね」
「デザインペーパー?」
「この折り紙サイズの紙。いろんな柄やイラスト、色のものがあるから、見てみて!」
「うん」
折り紙だと思っていたのはデザインペーパーというものらしく、ペラペラとめくっていくと、それだけで楽しかった。
その中からシックなピンク色の背景に花が散っているデザインを選んだ。
「そのままだとノートより大きいから、切って貼ると良いよ。切るのも、ハサミを使っても良いけど、手でちぎるように切ると味が出るからオススメ!」
「分かった」
私はノートのうえでデザインペーパーを少しずつちぎり始めた。四辺をちぎってハガキぐらいのサイズにする。
「いいねいいね。ノリはテープノリと固形ノリがあるから、好きな方使ってね」
いつの間にかテーブルの上にはハサミやノリ、テープノリに両面テープなどが並んでいた。
「これだけそろえたの? すごいね」
「そうかな? 絵の具とか買わなくなったら、お小遣いが余っててさ」
ユミカはさらりと言ったが、絵の具を買わなくなった、というセリフに私は胸が詰まった。
――絵、描いてないのかな。
でも表情に出さないように、私は固形ノリでデザインペーパーをノートに貼りつけた。
カラオケのうす暗い照明の下で黙々と作業を続ける。
A5サイズのノート一ページに、一時間以上かかっていろんなシールを貼りつけた。勉強なら三十分もかからずに埋まるのにとか思いつつ、私は「完成、かな」とユミカに見せた。
「わあ! 初めてとは思えないよ! ステキ!」
ユミカはノートを手に取ると近くで見て遠くで見て、傾けたり横から見たりしている。そんなにまじまじと見られると恥ずかしい。
「サツキの世界だね。英単語や英文が散りばめられていて、小説っぽさもあって。やっぱりサツキらしいよ」
その言葉に私は息が詰まった。
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