世界をコラージュる

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 最初に小説家になりたいと思ったのは、小学三年生のときだった。ちょうどその年に世界的ヒットとなったファンタジー映画にハマった私は、児童向けの原作小説を読んで「私もこんなファンタジー世界を生み出したい!」と思うようになった。  同じ時期に、仲の良かった男子生徒が、ノートにたくさんの文字を書いていた。何をしているの? と聞くと「俺、将来作家になりたいんだ!」と笑顔で語った。その笑顔がまぶしくて、私も心の中で「作家になりたいな」と思うようになった。  作家……特に小説家になりたい、と思うようになった私が一番に夢を語ったのはユミカだった。ユミカがイラストレーターになりたい、と夢を語ってくれたときに「サツキは何か夢はある?」と問われて「小説家になりたいんだ」と答えた。 「だから最近、よく図書館にいるんだね」 「うん」 「良いと思うよ! すごく良いと思う! 小説家、かっこいい!」  ユミカは自分のことのように楽しそうに笑ってそう言ってくれた。  それから八年ぐらい経った今。小説家になりたい私は、その夢に向かって進めているのか、不安でしょうがなかった。  ――あんた、本気で小説家になるつもり? お願いだからそんな夢みないで!  母親の言葉がまた脳裏によぎる。  私は意地になって小説家になりたいと思い続けていた。でも、それなら私は小説家になって何をしたいんだろう……。
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