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「で、幽霊とやらを、宮下たちはいつ見たんだ?」
「先週サークルでふたりに会った時、この話をしたら、『ああ、だいぶ前に見たことあるよ。関川も一緒だったよな』って。宮下がサラッと言って、関川も笑って頷いていた」
もうひとりのほうが吹き出しました。
「どういうこと? 幽霊って怖くないの? もう珍しくもなんともないのかよ」
幽霊を見たと言うイケメンも苦笑しています。
「そうなんかな。ふたりとも、幽霊をよく見るタイプなんだって。おれは初体験だから、なんか嬉しくてさ、会う人ごとに喋ってしまってるけど。そこら辺、違いがあるかもな」
私が話を聞いたのは、そこまでです。
その週末、件のエレベーターを見たくなった私は、いつものように通勤電車に乗りました。大国町駅で、御堂筋線から四つ橋線に乗り換えます。
幽霊に遭遇するとか、特に期待していなかったんですがね。
雰囲気だけでも感じたかったんです。
噂の駅に到着して、エレベーターを探します。『幽霊に会えるエレベーター』は、ホームの端っこらしく、見つけた私は、どきどきしながらボタンを押しました。
エレベーターの籠が降りてくるのを待ちます。
エレベーター扉、上部のガラス越しに、着物姿のおばあさんがいるのが見えました。
エレベーターに乗っているのは、その人だけです。
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