学園祭。 By 白石蔵之介

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学園祭当日 クラスの出し物は、メイド喫茶だ。 女子がメイド服を着て男子が執事の服を着る、今思えば明らかにメイド喫茶ではない気がするがそれは別に気にもしなかった。 流石に固定の人がフル稼働で働くのは可哀想すぎるので一時間ごとにローテーションをするという結果になった。 一番平和なやり方。 「 えっと、確か私は.. 」 教室に貼ってある順番を確認する。 私の担当は、12:30から、お昼だから一番混む時間帯に配置されちゃったなーなんて少し残念がる。 一緒の時間帯に働く人を確認すると、まず目に止まったのは、"白石蔵之介"という名前。 意図的になのか偶然なのかよく分からないが、一緒にやることは間違いない。 今更変えてくれと言っても迷惑になるだけし、此処は根性を見せるしかないかと、思った。 「 〇〇 」 「 うゎ..っ!、し..白石 」 「 ははっ、そんな驚く事なん? 」 「 そ、そりゃ..急に声掛けられるとな...っ 」 突然話しかけられて後ろを振り向くと白石が立っていた。 どうやら、順番を見に来たらしい。 白石は自分の順番を確認するなり、「 めっちゃ混むやん!! 」と私が思ったことを弁明(?)してくれた。 一緒の時間帯に働く人を確認すると白石は私の方を向いた。 「 〇〇と俺、一緒なんやな! 」 「 そ、そうだね、一緒だね 」 白石は嬉しそうに笑って私を見詰める。 今は、その笑顔が眩しくて心臓がキュッと苦しくなる。 自分が白石をいつから好きだったのだろうか、考えたくもない事が頭を埋め尽くした。 「 ...ずっと〇〇と一緒に居られるな 」 「 .. 」 三年前、白石にこんな事を言われていたらどんな反応を私はしていたのだろう。 少なくとも、こんなに苦しくなってはいないはずだ。 あの頃に戻りたいと当日までに何度も思った。 こんな恋心なんて、なくなっちゃえばいいのに。 「 時間まで結構間あるしその間に回ろか? 」 「 ...うん、そうだね 」 上手く笑えているのか分からない表情を浮かべ私と白石は歩き出した。 回っている間は、さっきまで感じていた苦しさはなくなっていて、思いっきり学園祭を楽しむことができた。 やはり、有名な中学の学園祭だから他校からの来客や四天宝寺の卒業生達も来ていてより一層賑やかな空間になっている。 そろそろ時間が近づいてきたので、二人で教室に戻った。 やはり、お昼の時間帯だから私のクラスのメイド喫茶は大反響。 たった数時間で目標金額を達成することができた。 そうして、無事、私達は仕事を終えてまた自由時間がやってきた。 他の人達とも回ろうかなと思っていたが、予想していた通り私はまた白石と回ることになった。 でも別に、一緒にいて心地よくないというわけではないので、嫌ではない。 「 ..、 」 「 .. 」 沈黙が続く中、必死に話題を考えている。 こういう時どんなふうに話せばよいか全く分からない。 考えた末思いついたのは、学園祭のことだけだ。 こんな話題で盛り上がるのだろうか、と不安が募ってきて中々話し出すことができない。 でも、話さなければ始まらないため勇気を持って白石に話しかける。 「 ね、ねぇ白石 」 「 ん?どないしたん?〇〇 」 私の方へ視線を向けては優しい笑顔を見せる。 これがまた、眩しくて直視できそうにないのだ。 「 明日..さ、学園祭最終日やん? 」 「 おん、せやなぁ 」 「 ...明日も..一緒に回らへん? 」 「 ...、 」 「 あ、嫌やったら、全然ええけど!! 」 突然黙り出した白石に私は焦りを感じて、取り消そうとした時。 「 ほんま!?絶対やからな! 」 「 え..っ、う、うん 」 流石に断られると思っていたが、白石は嬉しそうに了承してくれた。 まず、自分から誘おうと思っていない。 この言葉は、咄嗟に出た言葉だった。 意図的に言った言葉ではなかったため、自分が言った事に気付いたときには顔は真っ赤になっていた。 「 ははっ、顔真っ赤やで? 」 「 う、うるさいわ..しゃーないやんかぁ 」 赤面姿を見られたくないため、顔を逸らした。 「 はぁ..ホンマっ、かわえ 」 白石が何かを言ったように聞こえたが聞こえないふりをした。 白石はキュッと私の手首を優しく握って、「 ちょっと二人になれるとこ行こか 」 と人気のないところへ足を運んだ。 「 ね、ねぇ..なんで空き教室に? 」 「 ..まだ分かっとらんの? 」 「 え、?それって..__ 」 私が話をしようとした途端、私の唇に何かが触れた感触がした。 理解するのに時間なんていらなかった、だって、私の目の前には白石の顔があったから。 「 んっ!? 」 私は反射的に、白石を押し返してしまった。 白石は、「 わっ 」と絶対にビックリしていないような素振りを見せていた。 「 な、何..して 」 「 何って、キスやけど? 」 「 何で? 」 「 〇〇が、好きやから 」 「 ...! 」 白石から発せられた言葉は、冗談には聞こえなかった。 真面目で真剣な声色をしている。 私は黙ることしかできない。 私だって、白石のことが好きだけど返事をしてしまってはいけない気がした。 気まずくなってしまい顔を俯かせると白石は、「 堪忍な〇〇、返事は言わんでええから..ほな、また明日な。 」と教室から出ようとしていた。 「 ...っ、待って! 」 私は白石の手をギュッと掴んできもう一度私の方へ振り向かせた。 「 〇〇...、 」 言うしかない。 ここで言わなかったら絶対に後悔してしまう、だから言わなきゃ。 勇気を出して私は白石にこう言った。 「 私も..白石のことが好き!むっちゃ好きや! 」 「 白石が学園祭誘ってくれた時ホンマに嬉しかった 」 「 もしかして、私と回りたいから他の子の誘い断ってくれてたんやなって思うともっと嬉しくなってまう.. 」 自分の今までの気持ちを話していく。 話していくうちに私は涙が止まらなくなっていた。 次第に、涙で視界がいっぱいになり白石の顔もよく見えなくなっていく。 「 ずっと..友達の関係やと思っとったから、気持ちの整理付かんくて.. 」 「 ...〇〇 」  私の言葉を遮っては、ギュッと私を抱き締めた。 「 かわええ..マジでかわええ 」 「 ..へ? 」 「 ホンマに俺ん事好きなんやな? 」 「 う、うん 」 軽く頷くと、白石は嬉しそうな顔をしてもう一度私に口付けをした。
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