0人が本棚に入れています
本棚に追加
仲良くなって初めて知る。 By 芥川慈郎
「 あ、また寝てる.. 」
そう言いながら、ベンチを見下ろす。
そこに寝ているのは、氷帝学園三年テニス部の芥川慈郎。
彼は気付けばいつも寝ていて、起こすのにとても苦労する。
跡部も最初は頑張って起こしていたが今になっては、もう諦めているらしい。
で、今は私が起こしに行くのが日課になっている。
別にマネージャーでもなんでもないのにね。
「 芥川くん。起きて 」
「 ん"ー..?ぅん、 」
接点も何も無いのに、ただ跡部と仲が良いからって勝手に任命された。
最初はめっちゃ不機嫌そうに起きてたけど、今は素直に起きるようになった。
「 おはよう、芥川くん 」
「 〇〇ちゃんおはよー 」
ほんと、仲良くなったら態度が急変するから怖い。
最近は、一緒に帰るようになったし、昼休みになるといつも芥川くんが私の教室に遊びに来る。
次の日、また芥川くんが寝てるらしいから起こしに行く。
いつものベンチの所に居ると思ったけど今日はいなかった。
芥川くんが他に寝てる場所があるとすればと、自分なりに考えたところを探す。
でも、芥川くんは見つからなかった。
流石に心配になってきたので、もう一度ベンチに戻り探し始めた。
やっぱり見つからない。
どんどん怖くなってきて、跡部の所へ行った。
「 あ、跡部..! 」
「 どうした。〇〇 」
「 芥川くんがいないっ 」
そう言うと、跡部と他の部員の皆が目を見開いて私の方を向いた。
それでも跡部は冷静になり、「 そうか。他の場所は探したのか? 」と、私に聞く。
頷くと跡部は考え出し、もう一度私にこう聞いた。
「 __は行ったか? 」
「 ..行ってない..かも! 」
「 あそこにいねぇ時は、大体そこにいる。行って来い 」
私は跡部に「 有難う! 」と述べ、その場を後にした。
今思えば、なんで私はこんなにも必死になって探しているんだろう。
芥川くんがあそこにいないと不安になって、もう会えないんじゃないかって思ってしまう。
そんな事を考えているうちに、涙が出てきた。
走っていると、ふわふわな金髪が見えた。
「 ..っ!、芥川くん!! 」
「 ん?あ、!〇〇ちゃー..__! 」
私は無意識に芥川くんに抱き着いていた。
「 え..ぁ、〇〇ちゃん? 」
「 探したよ..バカ 」
芥川くんの体温を噛み締めるように、抱き着いて離れなかった。
本当に怖かった、此処にもいなかったらどうしよう。
いろんな不安が積み重なって今に至る。
私の啜り泣く声を聞いては、そっと私の頭を撫でてくれた。
「 ..ん、 」
「 俺の事、そんなに必死になって探してくれたの? 」
「 うん..っ 」
頷くと、芥川くんはギュッと私の事を抱きしめ返した。
その体は、私より大きくてスッポリと私を包んでくれている感じがした。
「 ごみんね〜..まさか〇〇ちゃんがそこまで頑張ってくれて俺嬉C..、 」
いつもの芥川くんとは違い、落ち着いている。
まるで、子供をあやすように私に声を掛けてくれた。
数分後、やっと落ち着いたため少しだけ芥川くんとの間に距離をつくった。
その顔は、優しく微笑んでおりさっきまで感じていた不安な事なんて全て吹き飛んでしまいそうだった。
「 御免ね、急に抱き着いちゃって.. 」
「 Eよ!、〇〇ちゃんが満足できたなら!! 」
「 ..優しいね、 」
芥川くんの優しさに、甘えてしまいそうになる自分が嫌いだ。
忙しいはずなのにこうやって私が泣き止むまで傍にいてくれる。
そんな芥川くんがどんどん好きになってしまう私がいる。
「 〇〇ちゃん、 」
「 ん? 」
「 俺さ、〇〇ちゃんが好き。 」
「 ...え? 」
唐突に言われた言葉に硬直してしまう私を真剣な眼差しで見詰める芥川くんがそこにあった。
「 わ、私? 」
「 うん。〇〇ちゃん 」
「 ....、 」
その言葉に思わずまた涙を流してしまった。
芥川くんは焦って急いで私の涙を拭いてくれた。
嬉しかったし、本当に私で良いのかななんて思ったりもした。
「 俺は、〇〇ちゃんじゃなきゃ嫌だ 」
「 ..私も、芥川くんの事大好きっ 」
そういうとまた、私達は抱き締め合った。
最初のコメントを投稿しよう!