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「 えっと..その...っ 」
「ライブ映像を見たから」と言えばいいだけなのに、余計な事を言いそうな気がして声が出ない。
恋を自覚している今、好きな人と二人きりでいれる時間は嬉しいはずなのに、今は嬉しくない。
むしろ怖いまであった。
「 僕は君の夢を否定すつもりはない。だから教えてくれないかな? 」
「 えっと...っ 」
泣きそうになり、グッと目を瞑って涙を引っ込ませた。
でも、涙は引っ込むことはなく段々と溜まる涙の量が多くなった。
「 御免なさい..っ 」
「 何で謝るの? 」
「 ..ほんと、私最低です..っ、 」
「 アイドルになれば..不二先輩を忘れられるって思ってしまう自分がいて..っ 」
「 僕の事を忘れられる..? 」
我慢の限界だった。
さっきまで溜めていた涙が一気に頬に降りてきた。
不二先輩は慌てることなく私の頭を撫でてくれた。
「 君の言う僕を忘れられるってどういうことだい? 」
「 っ、私..不二先輩の事が好きなんです..っ 」
言葉を詰まらせながらも、今出せる声量で愛を伝えた。
不二先輩の顔を見ると、いつも閉じていた目が開いていて綺麗な青色の瞳が私の目の中に入った。
沈黙が続き、不二先輩が口を開いた。
「 有難う。正直なことを言ってくれて 」
「 ほんと..すみません..っ、 」
「 何で謝るのさ 」
「 ..えっ? 」
そう言うと、不二先輩はゆっくり顔を近づけて私に優しく口付けをした。
抵抗しようにも抵抗できない。
不二先輩はゆっくり唇を離すと、
「 僕も、〇〇の事好き 」
「 本当はもっと早く言うべきだったけど勇気が出なくてね 」
理解するのに少し時間がかかった。
叶わないって思っていた恋が叶う瞬間。
嬉しいけど、驚きが勝ってしまい言葉が出なかった。
「 君が何かを頑張っているのは薄々気づいていたけどまさかアイドルになるとはね? 」
「 ...あ、あの!本当に..好きなんですか? 」
「 好きだよ。ずっと好きだった 」
そう言うとまた、不二先輩は私に優しく口付けをした。
fin
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