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驚いた。
まさか仁王がテニスをサボるなんて、明日隕石でも落ちてくるのか?なんて心の中で呟きながら、誘いの応答を考えた。
「いいよ」の3文字くらい簡単に口から出るのにこの時だけは出すことができなかった。
「 駄目だよ、ちゃんと練習しないと。真田に怒られるよ? 」
「 それは分かってる。 」
「 じゃあ何で.. 」
「 お前と一緒におりたいんじゃ 」
その言葉を聞いた瞬間一気に顔が赤くなった。
仁王が私と?そんなはずない。
第一、どうして私と一緒にいたいのか、他にもっと仁王に相応しい女の子がいるのになんで。疑問と疑問がぶつかり合っている。
「 冗談は辞めて、私の事共犯者にさせようとしてるんでしょ? 」
「 プリ 」
「 ほらやっぱり 」
共犯者にしたいだけ。
少しだけ、残念だった。
本当に私と一緒に居たいんじゃないかと思った私は馬鹿だ。
仁王がそんな風に思ってくれるなんて夢のまた夢であり、その夢は一生叶わないものだから。
泣くのを堪えるように唇を噛んで涙をのむ。
あぁ、あの言葉はきっと他の女の子にちゃんと、真面目に言うんだろうななんて自分を虐めるようにその場面を想像する。
コリウス、ヒガンバナ、シュウカイドウ。
この花は、私にぴったりな花なのかもしれない。
コリウスは「叶わぬ恋」
ヒガンバナは「諦め」
シュウカイドウは「片思い」
初めて人を恋愛感情で好きになって分かったことは沢山ある。
ここで告白して振られれば、楽になるのかもしれないし、もっと苦しくなるのかもしれない。
でも今は、もう少しだけ、この苦しくも楽しい感情と一緒に居たい。
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