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「 仕方ないな、今日だけだからね? 」
「 お、本当か? 」
「 うん。でも、バレたら私の事共犯者にしないでね? 」
「 分かっとる分かっとる 」
本当に分かっているのかと疑いの目を向けたが、仁王は気にせず私の手を取って歩きだした。
きっと先生達も知らない抜け道を使って幸村や真田にバレずに学校を出ることができた。
仁王はこういう抜け道をよく知っている。
何に使うのかは分からないけど、あっさりと傍から見たら違和感なく外に出ることができた。
「 へぇ、こんなところがあるんだね 」
「 凄いじゃろ、最近見つけた場所なんじゃ 」
「 うん凄いよ 」
仁王に手を引かれ、歩いていると綺麗なお花畑が見えた。
いろんな種類の花が数え切れない程に綺麗に咲いている。ここで、ピクニックとかしたら絶対楽しい。
でも、こんな綺麗な場所、私と行っても良かったのだろうか。
仁王の隣に相応しいのはもっと綺麗で可愛い女の子だ。綺麗でも可愛くもない私が、仁王の隣にいて良いのだろうか。
何を見ても、何処に行っても一番に頭の中に思い浮かぶのは不安な思いだった。
「 ねぇ、こんな綺麗な場所本当に私と行って良かったの? 」
「 〇〇が良いんじゃ 」
「 またそうやって冗談を... 」
「 ほう。ここまで言って、まだ冗談と言えるんじゃな? 」
「 え..? 」
そっと仁王の方へ顔を向けると、ふにっと何かが唇に触れた。
理解するのに時間はあまりかからなかった。
今私は、仁王にキスをされたのだ。
「 え..今、何を....っ 」
「 ん?キスじゃキス。分からなかったのう 」
「 それは分かった!分かったけど..なんで? 」
キスをされたのは分かったけど、どうして私にしたのかが分からない。
しかもこんな綺麗な場所で二人きりのときにどうして、聞きたいことは沢山あるが今私はきっと、仁王に見せられないくらいの間抜けな顔をしているだろう。
でも、すごく嬉しかったのも確かだ。
「 何でって、〇〇が好きだから。理由はこれだけじゃ 」
「 好きって..っ、そんな!また冗談言ってっ 」
「 冗談じゃない。 」
「 ...っ!? 」
「 好きじゃなかったら此処にもつれてこんかった 」
辞めてよ。
期待しちゃうじゃん。嬉しくなっちゃうじゃん。愛おしくなっちゃうじゃん。
今の心の中は楽しいとか、好きとかそういう子供じみたものじゃない。
不安と期待が入り混じっている私の気持ちを察したかのように仁王はゆっくりと私の事を優しくでも力強く抱き締めてくれた。
fin
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