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可愛い貴方。 By 財前光
最近、本当に財前くんが構ってくれない。
私と財前くんが付き合ってそろそろ半年が経つ。
未だに好きって言ってもらったことは無いし、愛情表現をしてもらったこともない。
でも、半年間されていないと流石に慣れてしまった。
時々、友達の話を聞いていて淋しさを感じる時はあるけど。
同じクラスだから多少話すことはあるが、皆に付き合ってると悟られない程度に話しているし距離も取っている。
白石先輩や謙也先輩はそういうのを気にせずに財前くんと話すことができているから少し羨ましい。
其れに、財前くんと同じクラスの女子達も距離感がバグっていると言っていいほど近くに来て喋っている。
その光景を見ると、泣きなくなってしまう。
自分だけが好きなんじゃないか。
なんて不安に毎日押し潰されそうになりながら財前くんの横に並ぶ。
「 本当に私で良いのかな.. 」
自習の時間、皆がわいわい騒いでいる中、聞こえないようにそんな事を言ってみる。
本当は、本人に届いてほしいけど届いてほしくない。
なんて欲張った考え、馬鹿みたいだ。
「 何、独り言言っとんの? 」
「 え..ざ、財前くん? 」
私の顔を覗き込んでは誰も座ってない椅子を持ってきて私の隣に座った。
びっくりしすぎて言葉が出なかった。
数秒間お互いの事を見詰めていると、また財前くんが口を開いた。
「 黙っとらんで、何言ってたか教えてや 」
「 えっと..気にしないで!財前くんには関係ない話だし 」
「 へー、本当に私でええのかな〜って言っとったやん 」
「 聞いてたんだ.. 」
「 バッチリ聞いとったで? 」
恥ずかしい。
聞かれたくないことを聞かれた。
「俺の隣が自分でええんか不安なんやろ?」と、言われ図星を突かれてしまった。
て言うか、よくそんな事を自習中に聞けたものだ。
でも、皆はそんな事を気にせずに話しているから今の会話も聞こえていないだろう。
そう願うしかない。
「 ...うん 」
自分に聞こえるくらいの声で返答し小さく頷いた。
「 やっぱり 」
「 う"っ、分かってるなら聞かないでよ.. 」
「 何でそう思ったん? 」
「 此処では言えないよ..恥ずかしいしっ 」
「 ふーん。 」
財前くんは少し考え込んでは、何を思いついたのか急に椅子から立ち上がっては私の手を引いて教室から出た。
皆の視線が私達に集められたが、焦りでそんな事は気にすることはできなかった。
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