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二人で階段を駆け上がり、屋上の扉を開けた。
目的地に辿り着いては、他の人にバレないように扉の後ろの壁に隠れて二人で座った。
こんな財前くんは見たことがない。
「 な、何で屋上まで? 」
「 此処の方が、理由、話やすいやろ? 」
「 でも..授業中は流石に..っ 」
「 俺が気になるんや。はよ話してや 」
「 ..分かったよ 」
財前くんの言う通り、自分が今まで感じていたこと、今思っていることを話した。
話しているうちに自然と淋しさなのか、二人きりになれたことの嬉しさなのか、言葉では表すことのできない涙が止まらなかった。
すべてを話し終わると財前くんは、
「 何で言ってくれんかったん? 」
「 だって..迷惑かけると思って..っ 」
「 〇〇に言われて迷惑って思う事なんてあらへんよ 」
財前くんなりの気遣いか、それとも本心なのか、分からないが嬉しかった。
気づけば口元が緩んでさっきまで止まらなかった涙も止まった。
「 ん。アンタはその顔が一番や 」
そう言うと財前くんは、私の頬を両手で優しく包んでゆっくりと口付けをした。
初めての口付け。
その口付けは一気に私の事を安心させてくれた。
肩にそっと手を置くと財前くんはぎゅっと私を抱き締め、離さないように腕に力を入れた。
またゆっくりと唇を離す。
「 俺だって嫉妬いっぱいしとるよ? 」
「 え、財前くんも? 」
「 おん 」
「 だって、俺の事一回も名前で呼んでくれへん 」
「 名前.. 」
「 呼んで名前で。 」
「 ...ひ、光くん? 」
「 ん、良くできました 」
そしてまた、財前くんは私にキスをした。
授業終わりの鐘が鳴っても私達は何度も口付けを交わした。
私にとって今日は初めて授業を抜け出し、最高の思い出になった。
fin
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