雪山の向こう側

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南極へは無事に到着し、俺達は仲間に合流したあと、政府の監視を避けながらラストを目指した。  順調に行ったかと言うとそうでもなく、幾人かは監視の目に捕まり、捕縛された。その後彼等が何処へ行ったかは分からない。元監視をしていた仲間ですら、行き場所は不明なのだと言う。 俺達は監視の目を逃れるため、なるべく天候の悪い日にラストへと目指した。そのせいで自然災害に巻き込まれたクルーも何名かいた。 「もう半数近く失ってしまったわ。全員で行ければよかったんだけど……」 この計画の発案者である彼女、リーダーとしての責任感からか、失われた命の重さに毎日涙を流していた。俺は隣でそっと彼女を慰めることしかできなかった。 ……そして ***************** ラストは近付くと、写真で見るよりも急勾配では無かった。 しかし、山へ登ることは決して楽なんかじゃない。 過去にエベレストの次に高い標高を持つK2、その登頂の経験があったのも俺が選ばれた理由の一つらしい。 山登りの経験のない連中は一人もいなかったが、ラストは簡単には登らせてはくれなかった。足を滑らせる者、途中でクレバスに嵌る者、そして体力が尽きて動けなくなり諦める者が脱落していった。 『もう戻りましょう』 流石の彼女も限界が来たのか弱音を吐いた。 『仲間は……脱落した仲間はなんて言った?』 『俺達の分まで頼むと言ったわ』 『じゃあ、やることは一つだろうアシュリー?』 アシュリー、アダムスの本名だ。旅をしていくうちに彼女とは深い関係となり、彼女は俺の彼女となった。 「シンジあと一歩ね、最後まで付いて来てくれてありがとう」 「当たり前だろ、お前は俺の大事な人なんだから」 「わたしもよ、シンジ……さん」 腕を伸ばす彼女の手を俺は取ると、重い足を地面から上げ、次の地面へと乗せる。このあと一歩を踏み出せばよいよ頂上だ。 「シンジ!?」 アシュリーが驚いた声を上げる。 「なんだ……よ……これ……」 世界最南端にあるはずの山の頂上で、俺達が見たものとは。 終
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