過去

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 ……今更、何を思い出してるのだろう。 「……もう、来てくれもしないのに」 あれから3年、彼はもう来てくれなくなった。 なぜなのか、ずっと分からなかった。 「……なんで来てくれないの……ばか」 私はずっとここで待ってるのに。 ……なんで……。 「……ごめん」 「……えっ?」 扉の方を向くと、彼がいた。 正真正銘の、板橋 哀翔が、そこにいた。 「なんで……」 「俺、あの後引っ越しちゃってさ」 「えっ……?」 彼から聞いた内容はこうだった。 彼はずっと私に会いたいがために親と交渉したが、受け入れてもらえず、強制的に引っ越してしまったらしい。 「……そう、だったんだ」 彼の気持ちを、初めて聞いた気がした。 「ごめん、ここに来るの……怖くて」 彼はそう言ってペコッと謝った。 まるであの日みたいに。 「……あの日みたいだね」 「えっ?」 「最後に来てくれたあの日、ドットアンドボックス……だっけ それで遊びまくって、沙友理さんに謝ってたでしょ?」 「あぁ……そうだったっけ」 彼は少しだけ照れくさそうにした。 「今日はもう遅いから……帰らないと」 そう言って彼は続けた。 「……また、来るから」 彼はそう言って、今日は手を振って帰っていった。 「……待ってるね」 最後、私はそう言ったけれど、彼に聞こえてたのかわからなかった。
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