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やがて。
気が付くとオレは麓の大きな病院前に立たされていた。
足元には遭難者の男。
そして雪女ギャルたちの姿はどこにもなかった。
すぐに病院の中から担架をもった看護師たちが駆けつけて来る。
看護師たちもかなりビックリしている様子だったが、遭難者の男の状態を見るや急いで担架に乗せて中へと入っていった。
不思議なことに無線も復活しており、オレは急いで本部に連絡した。
オレがはぐれたことに気づいた隊員たちは、すぐに本部に戻って再捜索の手配をしている最中だったそうで、オレが通信を入れるや否や大急ぎで駆けつけてきたのだった。
「うおー! 生きてたか、コノヤロー!」
「心配かけさせやがって!」
「しかも遭難者まで無事に助け出したなんてやるじゃねーか!」
仲間から何度も頭を叩かれながら、オレは事の経緯を隊員たちに語った。
猛吹雪の中でギャルメイクをした雪女たちと出会ったこと。
彼女たちの案内で遭難者を発見したこと。
そして彼女たちが麓まで連れてきてくれたこと。
一通り説明し終えると、話を聞いていた隊員の一人が言った。
「雪女のギャルバージョンか。そういや、この雪山は昔っから雪女伝説があるって言うよな」
「吹雪で迷子になった子どもを家に帰したって話、聞いたことあるぞ」
「一時期、ヤマンバギャルメイクの三人組を見かけたってヤツがいたな」
ヤマンバギャルと聞いて、オレはプッと吹き出した。
「時代の最先端を生きてまーす☆」というのは本当だったのか。
「それにほら、これ」
もう一人の隊員がスマホでとあるYou○ubeを再生させた。
それを見てオレはさらに吹き出してしまった。
そこに映ってたのは、あの雪女ギャルたちだったからだ。
『ウェーイ! うちら雪女ピッピーズどぇーす☆』
彼女たちは、猛吹雪の雪山のど真ん中でピースサインをしていた。
「これ、雪女にメイクしたコスプレ動画と言われてるらしいんだけどな。場所はこの辺りの山らしいんだわ」
雪女にメイクしたコスプレ動画。
まあ、確かに本物の雪女がYou○ubeやってるなんて思わないだろう。
っていうか、無線の電波障害の話はなんだったんだ。
自分たちの情報発信には障害が起きないのか?
不思議なことに、彼女たちの動画のチャンネル登録者数は100万人を超えていた。
「あいつら、ゴリゴリのユー○ューバーじゃねえか……」
そんな彼女たちのYou○ubeには最新の動画が更新されていた。
そこにはこんなタイトルが記されていた。
『悲報! オッサンをお姫様抱っこしたら抱き着かれた件! オッサン臭がすごい!』
そのタイトルを見た時、オレは思わず「オッサン臭言うな!」と叫んでしまったのだった。
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