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10、撤収!
公になっていないお付き合いは、自然消滅で終わる場合が多い。その真実がどんな修羅場であろうとも表面上は穏便にお別れだ。
鵜川さんと青山の恋の行き先は、鵜川さんに任せることにした。葉月には関係のない話だ。
引き続き、葉月は鵜川さんに仕事の相談をして、時々、撒き餌をしていた。鵜川さんは、青山と別れたとしても直ぐには次に行かない。
とことんクソ真面目なのだ。
待機しているのも時間の無駄なので葉月は退職することにした。
4月に入社して退職は9月末。ちょうど半年だ。本職の方も長くは休めない。「立つ鳥跡を濁さず」で、葉月は颯爽と去っていくことにした。6ヶ月住んでいた別宅の方も撤収準備は完了した。
葉月は、突然の退職をして田園調布の実家に帰った。
鵜川さんに最後の撒き餌をした。
『どこへ行こうと頑張ります』と指先でフリックしてラインを閉じた。
葉月の出身大学はFラン大だ。でも、世間の人々は東大生でもビリからトップまでいることを分かちゃいない。
葉月は大学で経済学部にいた。葉月の運命は鵜川のことだけではない。もっとガチガチの大きな物を背負っているのだ。
「私は書類を作る方じゃないの。作らせる方なんだよ。鵜川さん」と葉月は呟いた。
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