10人が本棚に入れています
本棚に追加
9、Fire(射撃)!
葉月は、食堂から社屋までの道を鵜川と一緒に戻ることが多くなった。
鵜川と青山が付き合ってることも公認ではなかった。噂の領域だ。社内恋愛は面倒くさい。片方が退社を引き換えにするだけの覚悟が無ければそうなる。
葉月には何も怖いものは無かった。
最近は、鵜川の腕に触れたり、かなりやりたい放題だ。真面目な性格でも鵜川も男には変わりない。年下の可愛い女の子に懐かれたら悪い気はしない。
この年下の可愛い女の子は、少し頭が弱いから距離感がおかしい……周りがそう思うように葉月は動いてきた。
その実、葉月は鵜川に纏わりつきながら、青山の動き方を目で追っていた。
青山は負けず嫌いで気が強い……それも計算に織り込み済みだった。
遠くから自分の彼氏に纏わりつく目障りな女を睨んでいる。
怒り?嫉妬?何だかわからないけど、面白くはないだろう。
葉月は、青山が我慢の限界を迎える時に大博打を打とうと決めていた。
葉月が鵜川にちょっかいを出して、2人で戯れあっていたら、青山が鬼の形相で叫んだ。
「鵜川さん!」
彼女に呼ばれた鵜川さんは、私に背を向けて青山へ行くよね?
鵜川が背を向けた途端に葉月は右のポケットに手を入れて「戸越銀座」と書いてある鯛焼きの袋を青山に見せた。
左手は中指を立ててやった。
片方の口角を上げてドヤ顔をした。
最初のコメントを投稿しよう!