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11、戦果報告!
葉月は、半年遅れて会社へ入社した。とは言っても、学生時代から父の手伝いで社長秘書の役割をこなしていたので何も問題はない。
葉月の祖父は一代で成り上がった企業経営者だ。父は二代目。後継は葉月になる。
葉月は社長室に入るなり、御大層な机で仕事をしている父に話しかけた。
「お父さん。鵜川さんの追跡調査している?」
「ああ、やっている。お前が言った通り、身辺整理は終わっている」
「そう。じゃあ、叔父様にお見合いを設定して頂かなきゃ」
「とことん自分の思い通りにする娘だ」と言って父親は肩をすくめた。
葉月は、3年前に叔父から見せられた1枚の写真で鵜川を見初めたのだ。叔父は先週まで勤めていた会社の専務だ。あの会社に入社したのは勿論コネだ。
その写真は会社のパーティーで撮ったものだった。叔父に直ぐ、お見合いを設定して貰おうとしたが、付き合っている女がいた。
その頃は付き合って2年目。未だ、恋愛の熱が高かった。
葉月は今動いても無駄だと判断した。
3年間、鵜川のことを想い続けていた。その間に鵜川と青山の情報を集め、2人の行動パターン及び心理を分析した。
葉月が大学で学んだものは、経営学、経済学、行動心理学。
彼は、きっと私を好きになる。いや、今はもう私の事が好きだろう。タイミング良く私は消えた。
ここから、彼の「私に会いたいという熱」が低くならないうちに彼と会うのだ。場所は叔父の家だ。
私は、その偶然に驚いたという表情をする。
戦闘においては、調査、計画、準備、実行が勝敗の鍵を握る。
それは、恋愛も経営も同じだと葉月には最初から分かっていたのだった。
……完。
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