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全属性の加護がある彼にはいまだに正式な婚約者がいない。
彼に釣り合うほど優秀な令嬢なんてなかなかいないからだ。
その神の愛し子の婚約者に自分がなれるだなんて、そんな大それたことは思ったことないけれど。
それでも。
“幼馴染みとして過ごしたこの十四年間で知った彼の優しさや温かさが大好きだった……”
からかわれているとわかっていても、甘い言葉を囁かれればドキドキとしたしお忍びの視察に誘われればデートなのかも、なんて浮かれもした。
もちろん彼には他意などないとわかっていたけれど、それでも私を誘ってくれることが嬉しかった。
だからこそ近くで彼の幸せを願い、側にいれるだけで良かったのに。それすらももう許されないのだと、その事実が悲しく胸が痛くて堪らない。
「何の役にも立たない私を側に置く必要は、ありません……。どうぞこれからは盾として視察には兄を、情報が欲しければ母を、剣術の指導は変わらず父をご用命ください」
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