始まりの刻

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始まりの刻

大きく透き通った池、真っ赤に染められた紅葉。 目の前に広がる景色に思わず息を呑む。 ここはどこだろう、と心の中で呟いた。 池の向かい側からチリンチリン…と鈴の音が聴こえてくる。 その音はだんだんとこちらに向かっているみたいだ。 綺麗な音だと思った。誰が鳴らしているのだろう。 突然風が大きく吹き、思わず目をつぶった。 風と共に鈴の音は聞こえなくなっていた。 乱れた髪を整えるために池を覗き込む。 (私って…こんな顔だったかな…) 腰まで伸ばした黒い髪、目の形や色。眉毛の形、唇も、全部一緒。でも何かが違う。 まるで私じゃないみたい。 「あなたはだれ…?」
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