8.遠い記憶

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チュンチュンと小鳥のさえずりが聞こえてくる。 頬を触ると濡れている。 (私…泣いてる…?) 夢の中で少女は泣いていた。 自分と少女は別人のはずなのに、まるで自分のような感覚がした。 「あの子は一体…誰…?」 鈴音は胸に違和感を抱えたまま寝ぼけた目を擦り、朝の準備を始めた。 朝の支度を終えると、少しぼんやりとしたまま部屋を出た。 (なぜあの子が牢に閉じ込められていたのか…そして、私と一体何の関係があるんだろう…) 夢の記憶をたどりながら、鈴音はその少女が自分とどこか似ているような感覚に囚われていた。 「あら、鈴音ちゃん。おはよう」 廊下を歩いていると、叔母の香織が声をかけてきた。 「…あ!おはようございます」 鈴音は驚いたように顔を上げた。 「どうしたのぼんやりして…、お祭りのお稽古はどう?」 「あはは…初めてのことで全然慣れないです。でも、千鶴子さんがしっかり教えてくれてるので頑張ります…!」 「それならいいんだけど…あなたも何かと大変ね。巫女をするってお義母さんから聞いた時はびっくりしたわ。まぁ、頑張ってね」 「ありがとうございます」 香織はそう言うと、その場を後にした。 鈴音は朝食を終え、再び夢のことを思い返しながら、学校へと向かう通学路を歩き始めた。冷たい風が頬を撫で、秋の深まる気配が辺りに漂っている。そんな中、彼女の耳にはふと微かな鈴の音が聞こえた気がした。 「鈴の音…?」 辺りを見回しても、人影は見当たらない。鈴音は不思議な気持ちのまま歩き出したが、その時、遠くから誰かがこちらを見つめているような気配を感じた。 鈴音の中に、夢で出会った少女の声が響いているような気がしてならなかった。それは、自分の心の中の問いを誰かが繰り返しているようにも感じられた。 ふと、彼女は遠い記憶の断片に触れたような気がした。誰かがずっと彼女を見守っていたような、そんな感覚。 「私の中で何が起ころうとしてるの…」 心の奥底で、何かが覚醒するのを待っているような気がしてならなかった。
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