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魔物と主の夜※
甘く掠れた声が部屋に響いて、いつも絵都はそれが自分の声じゃないみたいで恥ずかしくなってしまう。けれどもアルバートは絵都に声を我慢させる気はないらしくて、それどころか絵都を攻め立てて叫ばせる。
けれど四つん這いにされて後ろから絵都の弱い場所を香油で馴染ませるのは、すっかり絵都のお気に入りになってしまった。あっちの世界でも経験が無かった訳じゃないけれど、流れで遊び半分でやるのと心を許した相手とするのとでは感じ方が違う。
以前は男同士の性欲解消のひとつとして、我慢をしてた向きもあったけれど今はどうだろう。アルバートの繰り出す指先の愛撫も好きだけど、覚えさせられたもっと先の快感を欲しがっている。
「ああ、もう挿れて…!」
肩越しに振り返ってアルバートに懇願すると、アルバートは深い青色の目をぎらつかせてもう一度指で絵都の中をぐりっとなぞった。
「ああっ…!気持ち良いっ、アルっ!」
時々妙に意地悪になるアルバートを宥める方法のひとつはアルバートをアルと呼ぶ事だったけれど、今夜のアルバートはそれでは騙されてくれなかった。
何度も弱い場所を撫でられて、絵都はハクハクと浅い息をついて、爆発しそうな自分の股間を慰めようとついた手を後ろへ動かした。
「エド、ダメだ。」
軋む声でアルに止められて、絵都は満たされない渇望に肩から崩れ落ちてお尻を突き出した。姿勢が変わったせいで、絵都の中の指がモロに押しつけられてビクビクとお尻が震える。
「くそっ、エドはおねだりが得意だな。」
そう呟いたアルバートはぬるりと指を引き抜くと、満たされない絵都の窄みに新たに香油を垂らして、自分の獰猛なそれを何度も擦りつけた。
まるでマーキングの様なその仕草で、絵都はすっかり柔らかくなった窄みの出入り口をヌチヌチと撫でられて、うっとりする気持ち良さに甘く喘いだ。
ああ、もっといやらしいその棒で強く撫でて欲しい。でも撫でるだけじゃなくそれを中に突き立てて擦って欲しい。そして指じゃ届かない場所まで押し込んで善がらせて欲しい…!
絵都は欲望に支配されて、そんな望みを口にしていた事にも気づけなかった。アルバートはエドに煽られて、一気にヒクつくそこへ自分の剛直を突き立てた。柔らかく熱いその場所は、アルバートのそれをぎゅっと締め付けて、あまりの気持ち良さにアルバートも腰を振り立てることしか出来ない。
アルバートが今まででこんなに閨で興奮するのも、終わりがないのもエドが初めてだった。
侯爵家の後継として、指南も、こなれた淑女らとの遊びも、人並みにして来たアルバートだったけれど、エドが登場してから一度もよそ見をした事はなかった。
アルバートがエドに執着しているのは侯爵家では明らかなので、時折何か言いたげな父上の視線を感じるけれど、特別な魔物であるエドを蔑ろに出来ない事を良いことに、アルバートはその視線から目を逸らしている。
魔物であるエドとの関係がこの先どうなるのかあやふやなまま、その不安をこうして頻繁に身体を繋げることで解消している気がするアルバートだった。
とは言え締め付けるエドの具合の良い窄みは、その想いとは別にしても極上の味わいで、アルバートは誤魔化しようのない熱い感情を真っ直ぐにエドにぶつけた。
エドのヒクヒクと震える身体に息を呑んで堪えると、アルバートは繋がったままぐったりしたエドをひっくり返した。
「…もう少し付き合ってくれ。」
そう呟きながら、アルバートはエドの太腿を腕に引っ掛けて更に深く結合させた。それから休みなくユルユルと突いてやれば、エドが目に見えて狂ったように善がり出す。
「あっ、ああんっ、もう逝ってるから…!アル!」
そう言いながらもアルバートの目の前に美しい胸を突き出すので、アルバートがすっかり充血した胸のてっぺんを甘く齧るとエドはますます切羽詰まっていく。
普段ほとんど体臭の感じられないエドが、閨で汗ばんだ時にだけ香らせる甘いそれを、アルバートは首筋に鼻を押し付けて堪能した。自分でもエドの中で鎌首を持ち上げた気がして、エドの嬌声に重ねるように腰の動きを早めた。
「エド…!私も無理だ。一緒に…!」
エドと重なる唇がぶつかっているのか、交わっているのか、もう感覚さえ分からなくなった状態で、お互いを貪るようにアルバートはエドを味わって飛び立った。
アルバートの塗りつける白濁にエドは酩酊するかの様に、ぼんやりと虚な眼差しで黒い瞳をいっそう濃くした。搾り取っているのか、塗りつけているのか、二人にとってはどちらでも同じことだ。
ただお互いの胸の内を決して言葉にしないせいで、アルバートはますますエドに執着を見せて、エドはそんなアルバートに苦笑しながらも受け入れた。
魔物と主、その例のない関係のせいで、二人は一番近くて、それなのにどこか距離を感じていた。
「アルバート、僕はアルバートが居なくてもやっていけると思う?アルバートの様に僕をうっとりさせる相手なんて見つかるのかな。」
エドの魔法で綺麗にされたベッドに二人で横たわりながら、エドの呟きにアルバートは顔を顰めた。
「…エドは私の魔物だろう?無理じゃないか?私無しでは。」
それはアルバートの願いだったけれど、エドは少し笑ってアルバートの肩に頭を寄せて目を閉じた。
「そうだよね。…僕もそう思う。」
それから数日後、エドは手紙を一枚残して姿を消した。箱いっぱいに虹色魔石をぎっしり残して。
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