彼女の背には羽を、そして世界は終わりを告げる

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 家に居場所がなくて帰りたくないというと、彼女は家に招待してくれた。  誰もいないから、大丈夫だよって言って。  おおっぴらに人目につくところでは会いにくかったから、学校から離れた人気のないところで待ち合わせをした。  誰かと待ち合わせなんて、うんと小さい頃以来久しぶりだったから、なんだかドキドキした。  家には誰もいなくて、両親は共働きで二人とも帰りが遅いから好きにできると彼女は言った。  彼女の部屋に通されて、楽にしてね、と言われたけれど、そんなことできるわけもなくて、あたしはうつむいて縮こまって戸惑うばかりだった。  迷惑をかけないだろうか、ここにいてもいいんだろうか、ここにいるのはそもそも間違いなんじゃないか、あたしなんて場違いだ、とかそんなことばかり浮かんだ。  あーちゃん、と彼女が呼んだ。  顔を上げると、なぜだか彼女の唇に目が吸い寄せられた。  あーちゃん、と彼女がまたあたしを呼んだ。  彼女と目が合って、あたしたちは引き寄せられるようにキスをした。 「好きだよ、あーちゃん」  彼女がきれいに笑った。  天使みたいにきれいな彼女を独り占めにしている罪悪感と、優越感が入り混じってぐちゃぐちゃで、それをさらに彼女がかき乱していく。  甘くて、やさしくて、温かいもので満たされて、ぐちゃぐちゃになった。  あたしたちは何度もキスをして抱きしめあった。いくら触れ合っても足りなかった。
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