彼女の背には羽を、そして世界は終わりを告げる

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「もう行かなきゃ」  突然、彼女には羽が生えた。  それは世界中で同時に起きたことで、でもあたしの背中に羽は生えなかったし、大多数の人もそうだ。  ごく限られた人だけに羽が生えた。  そうしてどうやら、ごく少数の羽の生えた人たちは、空の上にいるという神さまの元へ行かなければいけないらしい。  呼ばれてるんだって。 「あたしを置いていくんだ」  恨みがましい目で彼女を見た。  どうしたってあたしは彼女と一緒には行けないし、かといって彼女がここに残ってくれることもない。  相手は神さまだ、敵うわけがない。  彼女はあたしに答えず「あーちゃん、好きだよ」とだけ言って笑った。  それは、こんなときなのに見惚れてしまうくらいきれいだった。  だからきっと神さまに選ばれたんだろう。  最初からいつか終わりが来るとあきらめていた。でもこんなのあんまりだ。  彼女の顔が近づいてきて、柔らかな感触が唇におりてきた。  最後にとびきり優しいキスを交わすと、開け放たれていた窓から彼女は飛び立った。
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