8人が本棚に入れています
本棚に追加
妖麗な少女
――その子は、卒然と現れた。
「――突然だけど、何か願いはないかしら?」
「…………へっ?」
玲瓏たる月の輝く、ある宵の頃。
アーチ橋の上でぼんやり水面を眺めていると、不意に届いたひんやりとした声。驚きつつ右の方へ視線を移すと、そこには悠然と笑みを浮かべる少女――白月に照らされ、いっそう鮮やかに輝る黒髪を纏う妖麗な少女の姿が。水晶のように綺麗なその瞳は、うっかり見蕩れているといつしか惹き込まれそうなほどに深い闇を宿していて。
最初のコメントを投稿しよう!