『選択』

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 段下ではリュートと共にたくさんの衛兵が木剣を手に鍛錬をしていた。 「リュクア、そんなところでゆっくりしていて大丈夫なのか? 準備は整っているのか?」  一つ年上のエリクアが庭園にやって来た。 「準備はできているよ」  来月にはシュリベリアに留学する。  番を解消された僕は新たに番契約をすることはできない。男のΩとして他国の王族に嫁ぐ事もできない。だけど、自国の役には立ちたいからと、医療と薬学、特にバース性について勉強した。  リリアでは、Ωを『リリアの聖母』として称え、大切に扱ってきたが、そうではない国もある。7か国が属する共和国でさえ、発情期を蔑みΩを忌み嫌うものとして非道な扱をする国がある。Ωについて見識を広め、抑制剤などの薬学を勉強したいと考えている。  その手段として、バース医療に秀でたシュリベリアに留学することを決めた。 「これは俺からの贈り物だ」  エクリアは僕のすぐ横に座ると水色のジャケットを広げた。繊細な刺繍が施されたそれはとても美しい。 「エリクア兄様、贈り物は先日も頂きましたよ」
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