508人が本棚に入れています
本棚に追加
「しばらく国を留守にする。一緒に行かないか? 他国に行きたいのなら俺と一緒に行ってもいいだろう?」
「駄目だよ。僕はΩでもあるし、番にもなれないから発情期もある。兄様について行っても困らせるだけだから」
エリクアは顔を曇らせる。
「それは、留学しても同じじゃないか。誰も助けてくれないんだぞ?」
「大丈夫だよ。もう幼い子どもじゃない。それにシュリベリアはバース性の専門医もいる。心配ないよ」
「何かあったらすぐに知らせてくれよ。すぐに帰って来てくれ」
エリクアは僕の頭を撫でる。一つしか違わないのに、エリクアは僕を幼い子どものように甘やかす。あの事件があった後はそれまで以上に過保護になっている。
「分かっているよ」
頷いてもう一度外を眺める。
視線の先にはクレアがいる。
「もう少ししたら共和国の承諾が出るみたいだな。熱心なのはいいけど、生きているのかさえ分からないのに……」
エリクアの視線の先には熱心に剣を振るリュートの姿がある。
最初のコメントを投稿しよう!