『選択』

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 『サザリアには俺の運命の番がいる』と言い続けたリュートの元に手紙が届けられたのは1年前だ。サザリアの王子から秘密裏に送られてきた手紙は2年も前の日付だった。内容は衝撃的な物だった。サザリアのアジュナルフ国王は数年前に亡くなり、その後弟王のアジュナログが即位した。そのアジュナログ国王の采配により、国は鎖国され国民は貧困に喘ぎ、疫病も蔓延しているということだった。2人いる王子の兄の方は大怪我を負って身動きはできず、死産と報告されていたアジュナルフ国王の息子は生きて監禁されているということだった。リュートは共和国会議で、サザリアを制圧し元領土であったリリアに奪還することを願い出た。  しかし、共和国議会はリュートの訴えを退けた。また、サザリアは断固として共和国からの支援を拒否し続けた。  リュートは何度も議会に訴えかけ、ようやくその重い腰が上がろうとしていた。 「戦争にならなければいいですね」 「ならないだろう。兄様は頭のキレる男だ。それにクレアもいる。あの2人がいればリリアは最強だ」
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