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クレアは椅子の横に置いた剣を手に取ると革のホルダーに納めた。
エリクアはリュートとワインを飲み比べして大分酔っている様子だった。
「兄様達、僕は部屋に帰るよ」
声を掛けると、「部屋に送る」とエリクアは席を立とうとしたが、「大丈夫。クレアに送ってもらうよ。彼も大分飲んでいるから」と断ってクレアと共に広間を出た。
クレアはふらつきながらも僕の側を歩く。
徐々に足の遅くなるクレア。
食事会はすでに国王王妃も退席していて、侍女や衛兵も最小限しか残っていなかった。夜中ということもあって周りには誰もいない。
徐々に首の後ろが熱くなってくる。
「大丈夫?」
横を歩くクレアを見上げる。クレアは荒い息を付きながら睨むように僕を見つめる。
ギラギラと欲望に満ちた瞳には見覚えがあった。恐怖を感じた。
だけど、後には引き返さない。
広間から僕の部屋に行くまでの間には兵士たちの控室がある。控室は夜になると皆宿舎や自宅に帰る為、誰もいなくなる。その奥にクレアの騎士として与えられた部屋がある。
『バタンッ』
控室のドアが勢いよく開かれる。
腕を取られてその部屋に引き入れられた。
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