『策略』

3/8
前へ
/104ページ
次へ
 クレアは椅子の横に置いた剣を手に取ると革のホルダーに納めた。  エリクアはリュートとワインを飲み比べして大分酔っている様子だった。 「兄様達、僕は部屋に帰るよ」  声を掛けると、「部屋に送る」とエリクアは席を立とうとしたが、「大丈夫。クレアに送ってもらうよ。彼も大分飲んでいるから」と断ってクレアと共に広間を出た。  クレアはふらつきながらも僕の側を歩く。  徐々に足の遅くなるクレア。  食事会はすでに国王王妃も退席していて、侍女や衛兵も最小限しか残っていなかった。夜中ということもあって周りには誰もいない。  徐々に首の後ろが熱くなってくる。 「大丈夫?」  横を歩くクレアを見上げる。クレアは荒い息を付きながら睨むように僕を見つめる。  ギラギラと欲望に満ちた瞳には見覚えがあった。恐怖を感じた。  だけど、後には引き返さない。  広間から僕の部屋に行くまでの間には兵士たちの控室がある。控室は夜になると皆宿舎や自宅に帰る為、誰もいなくなる。その奥にクレアの騎士として与えられた部屋がある。 『バタンッ』  控室のドアが勢いよく開かれる。  腕を取られてその部屋に引き入れられた。
/104ページ

最初のコメントを投稿しよう!

508人が本棚に入れています
本棚に追加