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『事故と自己と事後』
「……いやだぁっ、離せっ」
力の限り抗って、目の前の兵士の男の腹を蹴飛ばした。
『ドンッ』
激しい音がして男が入り口のドアに背中をぶつけた。
しまった。
唯一の出口であるドアに兵士がぶつかって完全に閉じてしまった。さほど広くない室内は随分と使われていないようで、埃とカビの匂いがした。
「大人しくしろ、Ωなんて……」
男が起き上がって床に座っている僕に再び伸し掛かって来た。
上に着ていた服はすでに破かれて心許ない程度にしかその肌を隠していない。
「やめろっ」
叫んでも男は襲い掛かって来る。抗う両手をひとまとめに掴まれて破かれた服で結びつけられた。ガチャガチャとベルトを外す音がして足掻いても成人した兵士の男の力には叶わなかった。
ズボンと共に下着も取られた。
「離せっ、やめろっ」
無遠慮に肌を撫でられてその気持ち悪さに恐怖して涙が零れる。
足の間を手でまさぐられる。
発情期は最近迎えたばかりだった。過信していた。
城の中には襲ってくるような者はいないと。
何かあっても誰かが助けてくれると。
それは簡単に打ち砕かれた。
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