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発情期だと気が付いた時には廊下にいた兵士に連れ込まれていた。
ギラギラと欲望に満ちた黒い瞳に睨まれると同時に腕を掴まれて、目の前の倉庫に押し込まれた。声を上げても石積みの壁は防音効果に優れていて外までは漏れない。
ほんの少し開いていて光が入っていたドアは、今完全に閉じてしまった。
発情期の熱が身体を熱くする。
目の前の男はβだ。
αでなかったことは番にされないという点では幸いではあるが、襲われていることに変わりはない。
「誰かっ。誰かぁっ、離せッ」
大声で叫ぶ。
『ゴンッ』
頭の後ろで音がして一瞬意識がふわっと飛びかけた。痛みによって頬を殴られて後ろ頭を石の床にぶつけたことが分かった。痛みに呻いても目の前の男は怯むことは無い。
縛られた腕は布が食い込んで痛む。
「触るなぁっ」
「いい匂いだ。もっと触って欲しいんだろう」
男ははぁはぁと荒い息をしながら裸の腹をその舌で舐めた。ブルブルと恐怖で身体が震える。
発情期でも痛みで意識は飲み込まれていない。
これがαならすでに求めて縋っていたかもしれない。
「ううっ……やだっやだやだっ、離せッ」
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