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「大げさになんて言っていない。今日は顔色もいいが、ゾルジアで会った時には酷い顔色だった。こんなに痩せているのだから、しばらくはゆっくり療養するんだぞ」
「それは父様から言われました」
「そうか。俺はレイの事で手が離せないことがあるから、困ったことがあればクレアに伝えろ」
クレア……。
「クレアも心配していた」
心配していたならそう言ってくれればいいのに。今も姿を見せてくれない。僕の側に寄ることを拒んでいる。
この間の事があるからだろう。
「しばらくはクレアを護衛に付けるから安心しろ」
「いや、クレアはレイ様に付けたらいいよ。僕には侍女もいるし、そんなに気を使わなくていい」
「今はシャルサウベーグ国王も滞在している。人の出入りも多いから衛兵を側に付けていてほしいんだ」
「過保護だよ。僕はもう幼い子どもじゃないんだから」
あれから10年以上も経っている。男性が苦手で臆してしまうことはあるけど、自分の身の守り方ぐらい分かっている。
「大丈夫だよ。それに、クレアは僕の護衛は受けないよ」
俯きそうになるのをこらえてリュートにほほ笑んだ。
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