『贖罪』

19/23
前へ
/102ページ
次へ
 引きはがそうとするとわざと力を入れた。 「……リュクア?」  リュートは一度身体を離してもう一度抱き着いた。首の辺りに鼻を押し付ける。  ビクッとした。 「な、なに?」 「香りが、しないが抑制剤を飲んでいるのか?」 「うん。そうだよ。新薬を試していて……利きがいいのだと思う。兄様が匂わないくらいだから。報告書に追記しておくよ」  リュートは離れると、「薬は進歩しているのだな」と頷いた。  抑制剤は飲んでいない。番がいれば他のαを引き付けるフェロモンを出すことはないから。クレアにしか分からないのだから、近づかなければ大丈夫だろう。 「そろそろ昼食会の準備に取り掛かるとしよう」  父はそう言って立ち上がった。 「リュクア。エッテも会うのを楽しみにしていた。後で遊んでやってくれ」 「はい」  リュートと共に立ち上がった。 「父様、シュリベリアから紅茶を沢山持って帰ってきましたので、昼食後のお茶会にはそれを用意させてもらってもいいですか?」 「それはいい。厨房に話しを通しておこう」 「ありがとうございます」 「リュクア。レイを紹介する。部屋に案内しよう」
/102ページ

最初のコメントを投稿しよう!

508人が本棚に入れています
本棚に追加