508人が本棚に入れています
本棚に追加
引きはがそうとするとわざと力を入れた。
「……リュクア?」
リュートは一度身体を離してもう一度抱き着いた。首の辺りに鼻を押し付ける。
ビクッとした。
「な、なに?」
「香りが、しないが抑制剤を飲んでいるのか?」
「うん。そうだよ。新薬を試していて……利きがいいのだと思う。兄様が匂わないくらいだから。報告書に追記しておくよ」
リュートは離れると、「薬は進歩しているのだな」と頷いた。
抑制剤は飲んでいない。番がいれば他のαを引き付けるフェロモンを出すことはないから。クレアにしか分からないのだから、近づかなければ大丈夫だろう。
「そろそろ昼食会の準備に取り掛かるとしよう」
父はそう言って立ち上がった。
「リュクア。エッテも会うのを楽しみにしていた。後で遊んでやってくれ」
「はい」
リュートと共に立ち上がった。
「父様、シュリベリアから紅茶を沢山持って帰ってきましたので、昼食後のお茶会にはそれを用意させてもらってもいいですか?」
「それはいい。厨房に話しを通しておこう」
「ありがとうございます」
「リュクア。レイを紹介する。部屋に案内しよう」
最初のコメントを投稿しよう!