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リュートに促されて執務室から廊下に出るとナーシャとリュートの衛兵が待っていた。
「ナーシャ、お土産に持って来た紅茶を厨房に届けておいて。昼食後のお茶会に使ってもらうから」
「はい。分かりました。他の方へのお土産はどうしますか?」
「ああ……。じゃあ、『誘惑の香り』をいくつかすぐに持って来てくれるかな。渡したい相手がいるから」
ナーシャはすぐに部屋に向かってくれた。
甘い香りはΩのフェロモンを彷彿とさせる。
『誘惑』とはΩの香りのことだ。αにはとてもいい香りに感じるだろう。怖がりと言っていたが、何かきっかけがあれば変わるのかもしれない。
「兄様、少し待ってください」
執務室から出て廊下でリュートを引き留めた。
「ここで待った方がすれ違わなくていいかな」
リュートはそう言うと立ち止まった。
「これほどフェロモンを抑えられるなら副作用は大丈夫なのか?」
「まだ実験段階だから」
「また自分で試しているのか?」
リュートは眉間に皺を寄せた。
「Ωは少ないからね。他のΩの研究者も同じだよ」
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