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リュートの言う通り、すぐには懐いてくれそうにない。
大国のリリアの王子に取り入ろうとする輩は多い。身内にさえ媚びを売る物も多いが、レイは全く違う。敵視さえされているようだ。
「これはお土産です」
紅茶の箱を差し出すと、おずおずと自ら受け取った。
「シュリベリアは紅茶が有名です」
「ありがとうございます」
「あいさつに寄っただけだから」
僕は部屋を出た廊下にはナーシャがリュートの衛兵と一緒に待っていた。
「ナーシャ、昼食会の場所まで一緒に行ってくれるかな」
厨房に紅茶を届けるように言ってはあるけど、他に侍女はいなくて衛兵とふたりになるのは避けたい。
「はい。バラ園に繋がるテラスで昼食会は行われるそうです」
ナーシャが他の衛兵に会釈をして先立って歩き出す。衛兵は僕に深々と頭を下げた。
廊下を少し進むと向かいから足音が聞こえた。
クレアだ。
昨日の礼を言わないと。
廊下に差し込む光がクレアを照らしている。背も高く精悍な体付きのクレアがマントを靡かせて歩く姿は見惚れるほどだ。
「リュクア様」
廊下で僕を避けるように壁に寄ると深く頭を下げる。
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