『事故と自己と事後』

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 12歳だった。初めての発情期を迎えてあまりに早い性の発現に周囲は驚いた。兄は皆αだった。1つ上の兄のエリクアもその上の兄リュートも体格に恵まれて大人びていた。華奢でおっとりとした性格の僕は幼いころからΩだろうとは言われていたが、あまりに早い発情期はまだ精通も迎えていない身体には負担が大きかった。  2度目の発情期は一度目からわずか2か月で発現した。幼い故の不安定。突発的な事故だった。  中年の兵士は幼い頃から従者として近くにいた。周りには誰もいなかった。  庭に出て母様の好きなバラを摘んで部屋に届けるところだった。  夏に近づいて湿度も高く、まとわりつく熱気が発情期の兆候だとは気が付かなった。  不運は重なるようにできている。  幼い身体は突然の発情期に崩れ落ちた。兵士はそれを抱き留めた。  甘く欲を引き付ける香りは若いがゆえに爆発して溢れたのだ。  この事件以降、発情期の熱に敏感になった。自分を守るために必要な知識を身に付けることで発情期以外では熱を無用に放出することは無くなった。そして発情期中も抑制剤を使って抑え込んだ。
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