『選択』

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『選択』

 雄々しく、気性が荒いクレアはリュートの側仕えから鍛錬を重ねて騎士となった。クレアがリュートの騎士になって戦場に赴く。側に護衛として仕えて、執務中も一緒に行動する。執務で外国に出向いていくこともあった。  国王である父の弟は息子がふたりで長兄のクレアは、「リュート様こそ次代の王に相応しい」と尊敬の念を表すために、自らの性を捨て王位継承権を捨てた。家督は次男が継ぐことになっている。  僕を襲った中年の兵士は激高したクレアに致命傷を与えられて、死亡した。  懲罰を受けることになったが、第三王子を助けたとして不問になった。  事件後、クレアは素養を身に付け、気品ある騎士として成長した。かつての荒々しさはどこにも見受けられなかった。  格好いい。  ため息を零して手元の紅茶を口に運ぶ。屋上に作られた庭園にはテントが張られて、日の光を遮っている。そのテントの中からじっと段下を眺めていた。  募らせた恋心は伝えることもできずにじっと見つめることしかできない。  僕にだけ冷たい態度を取るのはあの事件のせいだと初めの頃は思っていた。数年経った今では必要最低限しか言葉を交わさない。明らかに避けられている。
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