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5-1 吉凶占い sideイスベルク
北の大地を護る極寒の地。通称その名も氷の国と呼ばれるアヴェランシェ。この国には護り神と言われるアイスドラゴンが居る。そのアイスドラゴンと共に国を治めていくのが古来からのこの地の習わしである。
「アイスドラゴンねえ。ぜんぜん興味ねえな」
俺がつぶやくと横にいるユージナルが呆れた眼でみてきやがる。
「イスベルク様。そりゃあないでしょ。ご自分のことじゃないですか」
まったくもうとぶつくさ言って頭をがりがりかいている。ユージナルは俺の乳母の孫だ。物心ついた時から共にいる乳兄弟ってわけだ。母親はちゃんといる。いるが父が溺愛しすぎているのだ。息子の俺にもあまり会わそうとしない。
「仕方ありませんよ。龍とは番をそれはもう大事にされる生き物なのですから」
乳母や側近から耳が痛くなるほど言い聞かされて育った。この地の皇帝である父は龍神であり竜人である。息子の俺も竜人なのだろうがあいにくその特徴が出るのが薄い。この国にいる他の竜人族とほとんどかわらないのだ。竜人族は通常の見た目は人間そのもの。ただちょっとばかし人間よりも丈夫で長生きなだけだ。そして竜のチカラを発揮するときだけ角が出る。龍神である竜人との違いは龍になれるかなれないかだ。
俺は別に焦ってはいなかった。龍は500年~1000年以上生きると言われている。じゃあ龍で父でもある皇帝が長生きしてくれるんだから俺が継がなくてもいいのではないかとさえ思っていた。弟もいるし俺でなくてもいいんじゃないかと。
「何をおっしゃられるのです! きちんと後継者になられて成人の儀を済まされないと寿命は延びないのですよ!」
宰相であるグラソンが必死で訴えてくる。龍になれたら成人の儀が終わるということらしい。つまりは龍になれなければこのまま竜人族と同じ寿命で尽きるということなのだろう。それでも別にかまわない。戦いに暮れ幾度となく敵をこの手で倒してきた。国を護る。それだけを考えて生きてきた。だが平和になった世に俺が存在してもいいのだろうか?俺の手は血にまみれている。命を懸けて守りたい者というのにまだであったことがないためだろうか?俺も父王のようになるのだろうか?母の尻を追いかけまわしている姿は仲睦まじいを超えていて情けなくもある。
「いつなれるかわからぬものにあまり期待するでない」
俺がめんどくさそうに言うとグラソンが困ったような顔をする。こいつはいつも影で皇帝や俺を支えてくれている。戦略をたてたら右に出るものはいない。敵にはしたくないやつではある。
「……わかりました。では一度吉凶占いをさせましょう」
「仕方がないな。つきあうとしよう」
吉凶占いとはその名のとおり、吉とでればよい事。凶と出れば悪い事を占う。まあ気休めのようなものだ。占いなどに頼るなんてよほど俺の行く末を案じてるのだろうな。なんとも古めかしい迷信だ。
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ここからイスベルクの前日談が少し続きます。
「ここに来る前の俺の話しを聞いてくれないか?この続きは18時だ」
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