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6-2
しかし使いの者は一歩も引かず。追い返してもすぐにまた倍の人数でやってくる。とうとう宿屋の主人が土下座をして謝ってきた。
「申し訳ございません。そんな高貴な方とは思いもせず、どうぞお城の招待を無下にしないでください。あたしが丸焼きにされてしまいますっ。お慈悲をとお思いでしたらどうかどうかお城に行ってくださいませ」
丸焼きなんて大げさだが、主人の怯え方はただ事ではない。かなり脅されたんじゃないのだろうか。
「わかった。世話になったな。迷惑をかけてすまなかった」
仕方なく俺とユージナルが城に向かうと今度はあっという間に人だかりとなった。門番は? 兵はどにいるんだ?
「わあ。綺麗なお客様だねえ」
「ええ? もう来られたのかい? まだ用意はできてないよ」
まるで俺たちが来るのがすでに決まってたような口ぶりが癇に障る。
「身にまとわれているのはミスリルじゃないのか?」
ミスリルの事を知っていたのか。ミスリルは魔法効果を高めることが出来る鉱物だ。俺の衣装には細かく砕かれたミスリルがふんだんに使われている。北の国ではミスリルだけでなく貴重な鉱物がたくさん取れるのだ。
だが城に入った途端に魔力が滞るような感覚がした。急に旅の疲れが出たような感覚がする。ここ数日無理しすぎたか? 軽くめまいがした。
「イスベルク様がふらつくなんて。少し休んだ方が良いですね」
お前のせいじゃないのか?きっとそうだ。最後まで氷魔法交代しなかったろうが。
「おい。イスベルク様と俺は少し休ませてもらうぞ。晩餐会の時に謁見させてもらう。先に部屋を教えろ」
ユージナルが使用人を捕まえて問いただす。
「は、はい。ですが、まだお部屋がご用意できておりません。しばしお待ちを」
「待てない。寝る場所があればよいのだ。空いてる部屋はないのか」
「で、では二階の……い、一番奥の客間が開いておりますそちらの階段を上がってくださいませ」
「わかった。しばらくは立ち入りを禁ずる。用があればこちらから出向く。城の者達にはそう伝えろ」
「は、はい!」
速足で階段を登るとといきなり業火がこちらに飛んできた。刺客か?階段なんて狙い撃ちの的になるような場所じゃないか。まさか罠だったのか?
咄嗟に魔法を展開したユージナルの氷の壁に炎はかき消される。だがその反動で俺の身体が傾いた。
「ダメだ! 危ないっ」
階段から踏み外しそうになった身体を押し戻されたと思った瞬間、か細い少年が俺の目の前で落ちていくのが見えた。あんな折れそうな身体の子供が俺を庇ったのか?
「うそだろ……」
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この続きは明日の12時にて。
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