28人が本棚に入れています
本棚に追加
8-1 着せ替え人形
ひとしきりオレの生い立ちを聞いた二人は難しい顔になった。
「本当に王子なのだな?」
「はい。こんな姿じゃ信じてもらえないかもしれませんが」
イスベルクは眉間にしわを寄せてオレを睨む様に見つめ続けている。カッコいいけどちょっと怖いよ。整いすぎている顔立ちのせいだろうか。クールで冷たい雰囲気が氷のようだって呼ばれる理由だって本人はわかっているのかな?
小説の中のイスベルクは北の大地を護る皇太子だ。過酷な環境を乗り越え国を采配していくには常に合理的に物事を運ぶほうが都合がいいと沈着冷静に行動する主君として登場する。国を護る事にしか興味がなく、高度な氷魔法の使い手でもある。荒れ狂う吹雪の中、淡々と兵を進める姿に雪上の悪魔だの、冷酷な皇太子などとあだ名がついてしまっていた。だがイスベルクは寿命が短く長くは生きられないという設定だった。
もし小説通りならイスベルクは長生きできないのかな? 服の上からでも、鍛えられた体をしているのが見てわかる。見た限りは元気そうだし何か持病でもあるのかな? 手を伸ばしイスベルクの腕に触れてみる。おお。筋肉すげえ。ムキムキじゃん。
「あ~。そろそろ薬でも飲もうか? ちょっと横になって眠っとけ」
ユージナルがそういってオレに薬を飲ませた。うげー。なんだこの味。苦いっ。
「まずい……けほっ」
イスベルクが固まったまま耳が赤くなっている。オレを凝視したままで。なんかオレ悪いことしたか? ひょっとして嫌われている? 助けようとしたのが迷惑だった? ごめんよ。悪気はなかったんだ。ただ助けたかったんだ。
薬が効いてきたのかオレはいつの間にか眠ってしまった。
◇◆◇
「おい。起きろっ」
身体を強く揺すられて目が覚めた。いつの間にか朝になっていたようだ。
「ったく。お前にも使い道があったとはな!」
デカイ声が頭に響く。この声はあいつだなと思って顔をあげると第一王子エリュプシオンがふんぞり返ってオレを睨みつけていた。なんだ一体? イスベルクは? ユージナルはどこだ? 二人はどこにいったのだろう。
~~~~~~~~~~~
続きは今夜18時にて。
最初のコメントを投稿しよう!