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「……マリアージュ」  王様がルミエールの母親の名前を呼びやがった。覚えていたのか。なんか嫌だな。 「マリアージュに似ておるな。大きくなった。もっと近くに寄れ」 「お久しぶりです。ルミエールです」  ぺこりと頭をさげると王がにたりと笑った。なんか気持ち悪い。 「昨夜の晩餐会でイスベルク殿と会談したところあちらはお前が気に入ったようだ。両国の国交のためにお前は氷の国へ行け」 「それで王様は僕を差し出す代わりに何を手にするのですか?」  今すぐ教えろ。オレが大人しいルミエールのふりをしているうちにな。 「ほう。わしに直接質問するとはなかなか度胸があったのだな。よかろう。聞かせてやろう。まずはミスリル。それと貴重な鉱物の数々。また戦時には援軍を寄こす契約を結んだ」  やっぱりな。つまりは政略結婚ということか。それでイスベルクは何か得ることはあるのだろうか? 「氷の国には食料や様々な交易品が届くことになる」  オレの視線に気づいたユージナルが答えてくれた。 「最後に抱きしめさせてくれるか」  王が手を差し伸べてきた 。息子だと思ってくれていたのか? ルミエールへの最後の思い出にと気を許して近寄ると肩を抱かれ耳元で囁かれた。 「お前には特別な仕事を用意した。隙をみて皇太子の寝首をかいてこい。ワシのもとにその首を持参しろ」  こいつ! どこまで腐ってやがるんだ? 何でも自分の思いどおりになると思うなよ。 「嫌だっ! 離せっこのくそジジイっ!」  堪えきれずに本音を言っちまった。ぶわっと殺気広がったと思ったら一瞬目の前が炎に包まれ、すぐにオレの半身が冷たくなっていた。な、なんだ? 何が起こった? 「大丈夫か?」  心配そうなイスベルクの声がする。いつのまにかオレはイスベルクの腕の中にいた。速い。助かった。オレの暴言に腹を立てた王は俺を焼こうとしたのだろう。それをイスベルクがすぐさま止めてくれたのだ。速すぎて見えなかったけど。王にとってはルミエールという存在はその程度なのだ。またオレの中のルミエールが泣いている気がする。泣くなっ。こんなやつのせいで泣くな。涙がもったいないだろ。 「炎の国の王よ。平和的に交渉に及んだ俺をないがしろにするつもりか?」  イスベルクのこめかみに青筋がぴくぴくと立っている。 「ぶぁははははは。冗談だよ。冗談。ただの親子喧嘩ではないか」  親子だと思ってないくせに……。 ~~~~~~~~~~~~ 明日はイスベルクの従者、ユージナルのお話し。12時更新です。
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