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 まあ確かに南の国と国交ができるなら有益になることもある。我が北方の地特有の冷温で作成された酒や透き通る氷のような水晶、とりわけ希少価値が高いとされているのが魔法増強作用がある鉱物の数々。これらを他国から欲しがられてはいる。だが逆に北側からしたら作物の育ちが悪く食料難になりやすい。豊かな南国の食材や穀物が手に入るのなら欲しい。 「どちらにしても来るのは王子。形だけの婚姻となりましょうぞ」 「それはイスベルク次第じゃがな」 ◇◆◇  国境近くまでイスベルク様がお戻りになられたと連絡が入り、急いで城の者達へ伝令を課す。使用人たちも緊張気味だ。炎の国の住人は好戦的な種族だ。何かと理由を付けて争いごとになるかもしれぬ。すぐに戦える兵士達を控えさせる。イスベルク様に気づかれない様に背後や側面に弓部隊も配置させた。氷の城は厳重警戒となった。なにせ火の国の者は筋骨隆々で荒々しい性格の者が多い。輿入れしてくる者も同じ類のものだろうと周りは警戒していたのだ。  だが馬車から降り立ったのは頭からすっぽりとローブをかぶった細身の華奢な少年だった。イスベルク様が隣で手を取ってなければ城の入り口で追い返されたであろう。 「戻ったぞ」  いつものように無表情のイスベルク様とその傍には護衛のユージナルが無言でいる。ユージナルめ。連れ戻すどころか一緒に旅にでるなどと。イスベルク様と乳兄弟だからと図に乗ってるんじゃないだろうな。まぁ無事に連れ帰ってくれたのだから今回だけは大目にみてやるか。 「おかえりなさいませ」  私が深くお辞儀をすると間をおいてローブの少年も頭を下げた。 「……どうぞこちらへ」  言いたいことはたくさんあれどとりあえずは中へと通そう。 「このまま皇帝陛下に謁見に参る」  それはこちらとしても好都合。是非ともイスベルク様のお考えをお聞かせていただきたい。そもそもその少年は何者なのだ。炎の国の王子はいまどこにいるのだ?  だが、大広間に連れて来られた少年が、ローブのかぶりを外すと中からストロベリーブロンドの髪が現れた。小ぶりの鼻にぱっちりした目に小さな唇。外気との温度差に耐えられぬのか緊張のせいか、その体は震えている。思わず抱いて温めてやりたくなるような庇護欲を誘う容姿だった。 「寒いか? すぐに終わらせるからな。少しだけ耐えてくれ」  少年の肩を抱き寄せ、聞いたことがない優しい声がイスベルク様から聞こえる。少年は軽く頷いたようだ。まさか。……まさか? ~~~~~~~~~~~~~ 続きは明日の12時へ。
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