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20-2
食事が一巡したところで家臣たちが交互に挨拶にやってきた。最初のうちはにこにこと答えていたルミエールだがそのうちこくりこくりとやりだした。
長旅だったからな。疲れが出たのだろう。カクンと首が倒れたのを片手で支え、そのまま膝の上に乗せる。腹もいっぱいになって眠くなったに違いない。年齢に対して少し小さめの身体は栄養が足りてなかったせいだろう。食事に気を付け運動をさせれば健康的になるに違いない。
健康的でないと子供も産むのが大変だろうな……子供。ああ、父上が余計な事を言うから妄想が。子供も可愛いが。まずはルミエールを可愛がりたい。柔らかい髪をそっとかきあげるとおでこにキスを一つ落とした。上気したバラ色の頬をすり寄せると小さな唇が目に入る。うっすらと開かれた唇に舌をこじ入れてみたい。指先で下唇をなぞるとふにゃっと笑う。
「くくく。可愛いな……」
「コホン! あ~。イスベルク様。ルミエール様がお疲れのようでしたらお部屋に連れて行かれてはどうでしょうか?」
ユージナルに声をかけられるまで俺は周りの視線を集めてる事に気づかなかった。しまった。つい。
「わかった。少しの間席を外す。皆はそのまま歓談しておいてくれ」
そそくさと立ち上がるとルミエールを横抱きにしてその場を立ち去る。
「頭の固い頑固な連中に仲が良いところを見せつけるためにわざとやってるなら良いんだがよ。無意識だとこっちの目のやり場に困るってばよ!」
いつの間にか俺の横にいるユージナルが文句を言う。
「すまない。つい、可愛すぎて」
「あ~。もう。やっぱ無意識だったかあ。まあいいんじゃない。こうなったら溺愛してますって姿勢で突っ走ったほうがいいかもよ」
「突っ走るとは?」
「反対派がいるんじゃねえか?お前の縁談とか目論んでたやつらもいるだろうしな」
「俺にはルミエールしか見えないぞ」
「はいはい、ごちそうさま~。とりあえず寝かして来いよ。俺は扉の前で待っているから」
寝室のドアを開けそっとベットに降ろすとむにゃむにゃと俺の服の裾を掴む。
「くぅ~。……」
ああ可愛い。可愛すぎておかしくなりそうだ。離れたくない。こっそりと唇を奪う。やわらかな唇に理性が飛びそうになる。長いまつげを舌先で舐め、かわいい鼻先を軽く甘噛みした。まだ起きない。そっと下半身を撫でる。ああもうこのままいっそ……。
「ん……もぉ食べれない……」
「ぷっくくく」
はあ。あぶなかった。寝言に救われたかもしれない。深呼吸を繰り返し、そっと掴んでいる指を外す。
これが好きという感情なのだろうか?番に固執してしまう竜人とは厄介なものだと思っていた。戦いで勝つために洞察力も身に着け、人を威圧することも覚えた。だが、感情だけが置き去りになっていると周りからは言われた。自分ではよくわからない。感情とはどういうものか?戦いには必要ない。なくても良いとさえ思っていた。
だけど今は違う。日に日に思いばかりが募ってしまう。早く。早くこの手にしたい。誰にも渡したくない。俺のものにしてしまいたいんだ。だが、怖がらせたくない。普段は冷静さに努めているがルミエールから触られると欲望があふれそうで固まってしまう。ユージナルが傍に居てくれてよかった。あいつがいなければ俺は襲い倒していたかもしれない。傷つけたくはないのだ。蕩けさせて俺なしでは生きていけなくしたいんだ。
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イスベルクは「好き」と「独占欲」を覚えた。レベルアップ。
続きは明日の12時にて。
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