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23-1 母の思い出
急に慌ただしくなった。イゴール様が氷の国皇帝陛下として各国にイスベルクとオレの婚儀が決まったと通達を流したのだ。そのため問い合わせやご祝儀が殺到したのである。
肝心の式のほうはイスベルクとしてはすぐにでもあげたかったようだが、宰相のグラソンとキャンベルが待ったをかけた。グラソンはオレがまだ王族教育を終えてないこと。キャンベルは式服が間に合わないという理由からだった。
「ごめんなさいね。バタバタしちゃって。各国からお祝いが先に届いちゃって」
にこにこと笑うネージュ様の前でオレは今お茶を飲んでいる。目の前には美味しそうなケーキもある。
「いえ。その。僕こそあまりこう言うのに慣れてなくて。……は、はは」
イスベルクやイゴール様の忙しい時間帯にあえて一人だけ呼び出されたのだ。
「ふふふ。マリアージュの話を聞きたくって」
「ええ。僕が知っていることなら何でもお答えします」
と言ってもルミエールの記憶の中から探し出すって感じなんだけど。いまだに自分の事だけど自分でない感じがして慣れない。今のオレは陽向として生きてきた時の性格の方が強く出ているからかもしれない。
「私たちはここからもっと北東の小さな村にいたの。その村では女の子が生まれると「ジュ」の字をつける習わしがあってね。私がネージュ。貴方のお母さんがマリアージュ。ふふ。響きが似ているでしょ」
「ええ。似ていますね」
「だけど。村のすぐ裏山でミスリルの鉱石が見つかってね。そこから戦になり私たちは生き別れになってしまったの。村も焼かれ。生き残った者は南に連れて行かれそうになって。銀髪の白い肌って北国特有らしくて南では珍しいそうなの。そんな時イゴールが現れて助けてくれたの」
「そうだったんですね」
「ええ。助かった者たちともバラバラに別れて。いくところがないならうちにおいでと誘ってくれたの」
う~む。それはナンパというのではないのかな?
「僕の母のマリアージュは……気の強い人でした。炎の国の側室でしたが度胸がある人で周りを言い負かして離れの屋敷に住む権利を勝ち取っていましたよ」
「まあ。ふふふ。マリアージュらしいわ」
「はは。昔からだったのですね」
「ええ。私の事もよく助けてくれたの。大好きだったわ」
「ありがとうございます。母の事をそう言ってくれて」
そう言ってもらうとなんだか嬉しい。やっぱりオレはルミエールでもあるんだなと胸がじわっと熱くなった。オレはその頃の暮らしぶりや思い出などを語った。ネージュ様はずっと笑顔で聞いてくれた。
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「母の話が聞けるなんて」
続きは18時にて。
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