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23-2
「ルミエールも苦労したのね」
「……もう過ぎたことなので。それよりも前に進んで行きたいのです」
「強いのね。貴方はイスベルクが怖くないの?」
「はい。どうしてですか?」
「イスベルクが12歳から戦に出ていたのはご存じ?」
「はい。本人から聞きました」
「そう。それは、私のせいなのよ」
「え? イゴール様が番を溺愛していて離れたくないからと聞きましたが」
「あ~、それも本当なのだけどね」
しまった。相手は皇后さまだった。イゴール様は皇帝陛下だ。陛下の悪口を言ったことにならないかなあ。
「イゴールが私を溺愛してくれているのは本当だと思うわ。とても感謝しているの。でも、それだけが理由ではないのよ。私は村で戦があったときにひどいケガを負ってしまって魔力の機能が上手く働かない身体になってしまったの。だからイスベルクを産んだ時にかなりの魔力を奪い取られてしまって。特にあの子はイゴールのチカラを受け継いだチカラの強い子だったから。上手く調節ができなかったの」
イスベルクが母親に会えなかったのは理由があったんだ。父親の溺愛だけじゃなかったんだ。
「それでもあの子が11歳頃まではなんとかイゴールがそのチカラを抑えてくれていたのだけど。フロワが出来て私の魔力が更に低下してしまって。私はイゴールから魔力を分けてもらわないと動けない身体になってしまったの」
「そうか。だから離れられないんですね」
「ええ。そうなの。逆にイスベルクは強すぎるチカラに翻弄されがちになって。ある日暴走してしまったの。城の一部を壊して……。このままではいけないとチカラを発散させることにしたの」
「それで戦に出るようになったのですか?まだ12歳なのに?」
「最初のうちはこっそりイゴールがついて行った事もあるのよ。すぐに帰って来たけど」
「でもだからと言って12歳はまだ子供ですよ!」
「ええ。でも竜人は成長が速くて見た目はもう大人だったのよ。それにあの子は初陣で敵を全滅させてきたの」
竜人?そうだ竜人族!小説の中で北の国の竜人族の話があった。容姿は人と同じだけど人よりも生命力が強くて体が丈夫な種族の話。……だからか。砂漠の中を車並みに駆けずり回る事が出来る体。鍛えていたからじゃなかったのか。
「怖かったわ。イスベルクは私の子供なのに……なのに12歳で敵を全滅させたあの子を私は怖がったのよ。イゴールはそれをわかっていてあの子を私から引き離したの。我が子なのに。私は母親失格なのよ」
「失格だなんて。言わないで下さい」
「いまだに怖いと思う時があるわ。あの子は無表情で何を考えてるかわからなくて」
「それは違います。始めは僕も嫌われてるのかと思っていたのですが。最近は笑ってくれる時もあるんです。きっと感情の出し方が分からないだけだと思うんですよ」
「あの子が笑顔をみせるなんて。よほど心を許してるのね。お願いよ。何があってもルミエールだけはあの子を怖がらないで欲しいの」
「イスベルクを怖くは思ってはいません。僕はイスベルクのモノなのです。」
「ふふ。そうなのね。純愛なのね」
「僕は彼への貢ぎ物ですから」
「……え? 貢ぎ物?」
「ええ。僕は炎の国からの貢ぎ物なんです」
「え?」
「え?」
あれ?なんかオレ間違っている??
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続きは明日の12時にて。
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