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「ぐっ……頭が……」  立っていられなくなりその場にしゃがみこむ。俺は……。そうだ俺はコンビニの帰りに交通事故にあって……。これって前世の記憶なのか? 同時にこの世界で生きてきたルミエールとしての記憶が呼び覚まされる。辛く寂しい日々。それと陽向(ひなた)として生きた記憶。なんだこれ? 俺は頭を打って忘れていた前世を思い出したのか?  虐げられた記憶。母との別れ。魔力スキル……。いろんな情報が頭の中にあふれ出して整理ができない。 「大丈夫か?」  声がする方に顔をあげると寝室の入り口が開いていて、軍服を着た銀髪男性と目が合った。まったく気づかなかった。わあ、俺ったらこんなところに座り込んでて恥ずかしい。  「ぁ。頭が痛くて……」 「……そうか。あの高さの階段から落ちたのだからな」  見てる。俺の顔をじっと見てる。そっか。前髪が長かったから顔をよく見てなかったのかな? 「おや、起きたのですか? ……可愛い子だったんですね」  後から部屋に入ってきたのは階段に落ちる前に氷の壁を作っていた護衛さんだ。この人は強い。身体もデカイし白髪でツンツンした短髪だ。触ったら痛そうだな。 「医者には見せたのだがもう少し寝てた方が良い」 「……はい」  俺の返事を聞くか聞かないかくらいの速さで抱き上げられベッドまで連れて来られた。触られた途端に身体がビクッとしたのはごめんよ。怯えてるわけじゃないんだが、どうも条件反射らしい。よほどこの身体で叩かれてたり暴力を受けてたんだろうな。触られることに慣れてないみたいだ。 「俺はイスベルクだ。隣にいるのはユージナル」  銀髪の人がイスベルクっていうのか。護衛の人がユージナルだな。よし、覚えたぞ。 「ルミエールです」  お言葉に甘えてふかふかベッドに寝かせてもらう。むふふ。柔らかいベッドは久しぶり。馬小屋で馬たちと一緒にわらで眠るのも好きだったけどさ。でも仮にも第五王子なのにこの待遇はヒドイ。今更ながらどうしてルミエールがこれまで卑屈だったのかがわからない。前世を思い出してから俺は人格が変わってしまったのだろう。  前世の俺は読書と格闘技が好きな普通の大学生だった。愛読書は幻想奇談シリーズ。オムニバス形式でファンタジー的な不思議な話がいっぱい詰まってるんだ。事故にあったあの日。俺はもしこのまま生まれ変われるならこの本のような世界にと願ったんだったな……。  んん? 銀髪のイスベルクとユージナル。炎の国。これってまさか! ~~~~~~~~~~~ 明日から12時と18時の一日2回更新となります。
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