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27-2
すぐさま侍従たちによって食事の用意がされた。小さな椅子にイスベルク様が狭そうに座っている。この部屋はルミエールに合わせて椅子は小さめサイズのなのか。
「ふふ」
「どうした?」
「今度イスベルク用の椅子も用意してもらっておくね」
「ルミエールは細いからな」
「もぉ。細いって言わないで。食事をもらえなかったからだよ。今はちゃんと毎日食べてるから元気だよ」
……食事がもらえないとは?炎の国はそんなに貧しかったのか?いやそんなはずはない。仮にも王子だろ?
「グラソンも一緒に食べよう」
「いえ。私は……」
「お腹が減ってないなら果物だけでもどうぞ」
「では少しだけ」
くそ。こういう気遣いができるから嫌いになれない。思いやりがある子だとは思う。
数日観察してみたがルミエールは見た目にあわせて幼めの口調を使っているが中身は違うような気がする。外見は天使か妖精のようだが中身はもっとはっきりした意思を持っている。時々ハッとするような意見を言ったり大人びた表情をするのだ。聞き分けも良いが思慮深そうな一面も持っている。油断してはいけないと感じさせる何かがあるのは王子としての品格なのか?元来持って生まれたものなのだろうか?
「そういえば私はまだルミエール様の炎魔法を見せていただいたことはありませんがどのような威力なのでしょうか?」
チカラの具合を知っておかなければ。すぐに対処ができなくなるからな。
「グラソン。食事中だぞ」
「いいよ。他の人にも聞かれるから。僕は炎属性とは相性が悪いんだ。ろうそくの炎しか出せないから」
え?ろうそく?炎の国の王子なのに?
「あまりに火炎量が少ないために祖国ではろうそく王子と呼ばれていたんだ。だから僕は本当はイスベルクにはふさわしくないのかもしれないけど……」
「そんなことはない!俺は魔法ができる出来ないで婚姻を決めたわけではない。ルミエールが良いんだ」
「ありがとうイスベルク」
なんだこの甘い空気は。イスベルク様は本気なのか?本当に本気で?
ルミエールが手のひらを上に向けるとろうそくの炎がぽっと浮かぶ。小さいがやわらかな炎だ。ぽっぽっぽっといくつか円を描くように出すとくるくると頭上でまわっている。小さな炎が踊っているようにみえる。
「はい。これでおしまい。ごめんね。このくらいの炎しかだせなくて」
「ルミエールの得意魔法は治癒だ。キャンベルの足を一瞬で治したぞ」
「なんですと!治癒ですか?」
なんと治癒ができるのか!これは使えるかも。戦時で一番困ったのは救護だ。回復魔法士が少なかったからだ。うむ。これは欲しい人材となってしまった。認めたくないが居てくれると助かる。ううむ。
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「なんとそんな力を隠し持っていたとは……」Byグラソン
続きは明日の12時にて。
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