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38-1 愛に溺れるだけじゃない
「いやだ。ルミエールと離れたくない」
イスベルクがオレを膝の上に乗せまま微動だにしない。
「来賓客のお見送りくらいしないと印象悪いっすよ」
ユージナルが呼びに来てるのに全く腰を上げようとはしない。シーヴルはすました顔でお茶のお代わりを入れてくれている。そのシーヴルが言うにはイスベルクは10代の頃を感情を封じ込めて大人と同じように務めていたので、今になってその反動がでているのだろうと。まあそれもオレとユージナルの前でだけだが。威厳のある見た目なのに言う事が駄々っ子みたいでギャップに萌える。
「なんで俺まで行く必要がある?父上に任せといたら良いだろう」
「その陛下がもう外交は嫌だと仰せなんですってば。そろそろ皇后さまとイチャつきたいんですってさ」
「……ケッ!俺のほうが新婚なんだ。もっとイチャつかせてくれ」
本当はオレも行かないといけないのだろうが、恥ずかしながら腰が抜けてまともに歩けない。
「ああもう!親子で惚気ないでくれよ」
「ごめんよ。ユージナル。オレだけでも行けたら良いんだけど、動けなくて」
「そうだ、ルミエールは自分に回復魔法をかけれないのか」
ユージナルに言われてハッとした。そうだ、その手があったか。以前は虐められるたびに自分で治してたじゃないか!ここに来てケガをすることがなくなったのでうっかりしていた。
「ユージナルっ!お前、言わなくてもいいことを言いやがって」
イスベルクはこのままオレと部屋でまったりしたかったようだ。結局オレは自分自身に回復魔法をかけることに成功した。それもなんと魔力が上がっていたのだ。
「よし!ルミエール。皇太子の伴侶として挨拶してくれ」
「うん。いいよ。着替えるね」
「待て待て待て。ならば俺も行く」
イスベルクも素早く立ち上がると着替えだした。
「へいへい。早くしてくれよ」
スパンっと突然シーヴルがユージナルを殴った。動きが早い。
「ユージナル。幼馴染だと大目に見てたが、今の口の利き方ははひどすぎるぞ」
「……すみません。師匠」
「え?シーヴルってユージナルの師匠なの?」
「「…………」」
「シーヴルは父上専属の護衛で武道と魔法の達人だ。だから武闘稽古の時は指南役として俺らを鍛えにやってくるのだ。今は父上の命令でルミエールについてる。俺がお前に無茶をしない様に見張る役目も兼ねているのだろう?どうせ父上に口止めでもされているのだろう」
「シーヴルは役目を終えたら陛下の元に帰ってしまうの?」
「今のところ帰る気はございません」
「ほんと?嬉しい!もっといろいろ教えて欲しい事があるんだ!オレを鍛えてください!」
シーヴルがニコニコしてくれてる横でイスベルクが苦虫をつぶしたような顔になってる。
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