4-1 城の戦力

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4-1 城の戦力

 イスベルクが俺の目じりの涙を指でぬぐってくれた。彼は小説幻想奇談シリーズの中で「氷の国の冷酷な皇太子」として登場する。もっと怖い人物かと思っていたのに。表情はそんなに動かないんだけど俺に対する仕草が優しい気がする。そりゃこんなにボロボロだったら同情するかなぁ。  それにしても綺麗に整った顔してるよなぁ。銀髪がきらきらしてるし。ユージナルの白いツンツン髪ともまた違う。  炎の国は太陽を称賛してる国だ。だから陽の下で焼けた褐色の肌の持ち主が美しいと称えられる。髪の色も炎のように濃い赤色が好ましいと思うようだ。炎属性の魔力の強い者はチカラを使うと炎のように髪が燃え上がる者もいる。だがそんな価値観を超えてくるほどにイスベルクは力強くて美しいと思う。そう思うのは俺の感覚が前世の感覚に近くなってしまったせいだろうか?  今はルミエールとしてよりも陽向(ひなた)としての感情や性格の方が強く出ている。もともと俺は幼少時病弱で周りからもいじめられていた。それを克服するために身体を鍛えていたんだ。誰かの役に立ちたい。頼りにされるようになりたかったんだ。でも今の外見はルミエールなんだよな。そしてルミエールとして生きていたという感覚もある。ただ、なんだかうまく言葉に出来ないけれど。俺が考えて行動にでたことはルミエールとして処理される。おめめぱっちりの外見と中身にギャップがあるってこと。  もう俺は陽向(ひなた)でもなくルミエールの中のとなったのだ。まあ難しく考えても仕方ないからやれるだけのことはやっていこう。とにかく前に進まなきゃ。   「悪いが俺たちはこの国に来たのは始めてでわからないことが多い。ルミエールの知ってるかぎりでいいから教えてくれないか」  ユージナルは気の良いヤツなんだろうな。オレだったらこんなに正直に初めて会ったやつに聞けるだろうか? 「そうだ。まずは相手を知らないと倒せないからな」  イスベルクの言葉にあ~そっちでしたかと腑に落ちた。まぁそうだよね。この国ってよく言えばおおらかだけどいきなり大勢で囲んだり騒いだりは客人に対する態度じゃないよね。 「まず最初に城の警備が緩すぎる気がしたがそれは俺らをナメていたからか?」   うっわ。尋ねかたが物騒じゃありませんか? 直接的過ぎて、はいって言えないじゃん。 「イスベルク様。その聞き方は答えづらいでしょ。普段の警備はどうなっているかわかるか?」  ありがとユージナル。そのまま緩衝材としていてくれるとありがたい。 ~~~~~~~ 続きは本日18時にて。
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