山神様のキノコ

3/15
前へ
/15ページ
次へ
 腹が満たされ、山菜汁が無くなった後、今度はタエが身の上話を始めた。  タエは、麓の村で貧しいながらも夫と姑、息子二人と暮らしていること、三人目の息子がいたが神様にお返ししたこと、姑に嫌われておりいつも辛く当たられることを話した。  おギンはタエの話に真剣に耳を傾け、時折頷きながら聞いていた。そして話が一段落したところで、目に薄っすらと涙をためたおギンがタエの背中を撫でた。 「ほんに、よう頑張っとるのぉ。タエさんはエラかなぁ」  その言葉を聞いたタエの目から涙がこぼれ落ちた。  その後も二人の会話は終わることなく、夜更けまで続いた。 ***  次の日も山の天気は回復せず、おギンの小屋に滞在させてもらうことになった。 「すんません」 「タエさんのせいじゃなかけ、謝るもんじゃなか」  正座をし、深々と頭を下げるタエにおギンは困った顔を向けた。 「でも……」 「山の神様がゆっくりしろと言うとるんじゃ。気にせずゆっくりしときんさい」 「…………ありがとうございます」 「それに、おらも久しぶりに人と話せて楽しかよ」  おギンはそう言うと、子供のようにニコッと笑った。  (お義母さんがおギンさんのような人だったら良かったのに……)  おギンの笑顔を見たタエは、目尻を下げ少し寂しげに微笑んだ。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加