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腹が満たされ、山菜汁が無くなった後、今度はタエが身の上話を始めた。
タエは、麓の村で貧しいながらも夫と姑、息子二人と暮らしていること、三人目の息子がいたが神様にお返ししたこと、姑に嫌われておりいつも辛く当たられることを話した。
おギンはタエの話に真剣に耳を傾け、時折頷きながら聞いていた。そして話が一段落したところで、目に薄っすらと涙をためたおギンがタエの背中を撫でた。
「ほんに、よう頑張っとるのぉ。タエさんはエラかなぁ」
その言葉を聞いたタエの目から涙がこぼれ落ちた。
その後も二人の会話は終わることなく、夜更けまで続いた。
***
次の日も山の天気は回復せず、おギンの小屋に滞在させてもらうことになった。
「すんません」
「タエさんのせいじゃなかけ、謝るもんじゃなか」
正座をし、深々と頭を下げるタエにおギンは困った顔を向けた。
「でも……」
「山の神様がゆっくりしろと言うとるんじゃ。気にせずゆっくりしときんさい」
「…………ありがとうございます」
「それに、おらも久しぶりに人と話せて楽しかよ」
おギンはそう言うと、子供のようにニコッと笑った。
(お義母さんがおギンさんのような人だったら良かったのに……)
おギンの笑顔を見たタエは、目尻を下げ少し寂しげに微笑んだ。
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