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タエが家の戸を開けると、姑のお松が繕い物をしていた。タエは、くっと息を飲んで声をかけた。
「只今戻りました。遅くなり申し訳ありません」
タエの固い声が家の中に響く。お松は一瞬手を止め、目だけでチラリとタエを見たが、すぐに視線を手元へと戻した。
(いつものこと。気にしちゃいかん)
ふぅと息を吐き、タエは釜土のほうへ行き、おギンがくれた山菜の入った籠を置いた。すると、独り言には大きすぎるお松の声が聞こえてきた。
「あ~あ、帰ってきちまったよ。折角、気が利く後妻にきてもらえると思ったのに」
タエはその場で俯き、両の拳をぐっと握りしめた。
(あぁ……おギンさんのとこのほうが気が楽だった)
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